2015-08-30

10句作品テキスト 薬 中山奈々

薬   中山奈々

悪口を言ふために呑む、鈴虫の相槌が上手い
何度いつたらわかるんだ、ぼくは御中虫じやない(好きだけど)
主治医が甘すぎてまた酒、薬、酒、薬、文香がゐる
誰かに死ぬなよつて言はれて生きてゐる、満足
これは俳句じやないわつて誰か言つてくれよ、ぼくの横で笑つて
ぼくが泣きたくなる日の若之が良い句を作る
カミングアウトを徐々に進行して木槿
秋のてふてふ考へろみろブルース・リー
リストカットしない代はりにぼろぼろの鰯雲
母さんが優しく健康に産んでくれたので飛蝗捕る
秋桜、ごめんねなんて言はないかなしくさせたくないから
世界一不幸だと思ふなよ世界一汗かきの一般人だ
病気になつたら名句ができるなんて嘘だよ秋の酒
ネンテンさんネンテンさんネンテンさん水澄んでをる
本が乱れた部屋でするナニは秋風に晒される
とても上手に爪を噛むんで秋の海に捨てる
外山一機を笑はすばい独楽が手に入らない
群青はよき色秋の海に使ふ
虚子が注がれし酌婦のことを考えて芒野原
隠したる必要はないけれど池田澄子の眼鏡が好き


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