2015-08-09

〔今週号の表紙〕第433号 八月の空 雪井苑生

〔今週号の表紙〕
第433号 八月の空

雪井苑生


真っ青な空、そしてむくむくと立ち上がる真っ白な入道雲は、誰にとっても八月の原風景となっているのではないだろうか。

ところが今年は梅雨が明けてから、まだ一度もそれを見ていない。当地は日本有数の高温の町である熊谷の近くなので、気温は連日37~38℃。日差しは強く、外を歩いていればクラクラするほどだが湿度が高いせいか、空は霞がかかったようなブルーグレイで、その下に熱気がどんどん蓄積されていく感じが堪らない。入道雲も湧くことはあるが、真っ白とはほど遠い。暑くても真っ青な空で、風が吹いてくれれば…などと毎日願いながらエアコンの部屋に監禁されている。

もっとも人間の目は他の部分同様、齢をとると劣化して青空などもクリアに見えなくなる、と聞いたことがある。確かに近視だの乱視だの、それがない人でも老眼にはなるし、性能が落ちていることは間違いないだろう。色を感じる部分も老朽化して濁ってくるのかなと納得が出来る。だとすると本当に美しい、あの真っ青な空と真っ白な雲は、子供の時だけに見えるものだったのだろうか。強烈な印象に時を忘れて見つめていた、遠い夏の日々。感動するココロも、今と違ってまっさらだったんだろうなあ。

まあ何十年も酷使した目が濁っているとしても、やはり青空が恋しい。こんな美しくも何ともない溽暑にはうんざりだ。今現在の子供たちのためにもあの夏空が戻ってきますように。彼らには曇りのない目で、美しい夏空を存分に眺めてほしい。子供のうちに夏をいっぱい身体に貯めておくためにも、ね。



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