2015-09-06

【八田木枯の一句】干網の目に目に秋の涙かな 西原天気

【八田木枯の一句】
干網の目に目に秋の涙かな

西原天気


干網の目に目に秋の涙かな  八田木枯

浜に干された漁撈網がまだ乾ききらず、網の目に水が残っている。これはやはり夏よりも秋にふさわしい景色でしょう。

網の「目」という比喩から実体の「目」を導き、水を「涙」と言う。こうした彩(あや)・言葉遊び・機知は、俳句においてはしばしば危ういものとなりますが、この句の場合、それほど悪いとも思えないのは、「秋の涙」という、なかば強引な、よく言えば大らかな、句の帰着によるものかもしれません。

秋という《巨大なもの》から分泌されたもの。それが網の目に目にとどまっている。網の目のむこうに秋の《全体》を感取できるような気になってきます。



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