2016-08-21

私も答えてみました 寺澤一雄

私も答えてみました

寺澤一雄


宮本佳世乃さんから、「あなたとオルガン」という題で原稿依頼が来た時、まず創刊号から6号まで揃っていることを確認しました。メンバーの方々とはどこかで句会をやったこともあり、「オルガン」は馴染みの同人誌という感じでしたが、熱心な読者でもなく、いつかはじっくり読まねばと思っていましたので、良い機会でした。 

毎号、同人が質問を出して、同人それぞれが回答し、その回答をもとに座談会をしています。その質問に答えてみました。


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Q1 あなたは俳句を書くとき、どのような読者を想定していますか?
A1 具体的な読者を想定して書き出すことはありません。私の句を最初に読むのは私で、読者としての私が楽しめる一句を書いているのかもしれません。つぎに私の句を読むのは句会の参加者だから具体的な顔も浮かべば、名前もわかりますが、句を書くときに、それらの人たちを想定することはありません。句会用の自選の時に無意識に想定しているかもしれませんが、あまり役に立つ想定にはなっていません。

Q2 読者を想定しない場合はありますか?
A2 Q1の答えからほとんど想定しないと答えざるをえません。

Q3 「あなたは俳句を、誰に向けて書いていますか?」はQ1と同じ問いだと考えますか。
A3  Q1とは違う問いと思います。俳句を挨拶性という側面で捉えると、読み手ではなくとも誰かあるいは何かに向けて書くということはありうることです。私の場合は挨拶は苦手なので、誰かに向かって俳句を書くこともほとんどありません。


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Q1 あなたの俳句にとって「仕事」とは何ですか。
A1 この問いにおける「仕事」を通常月曜日から金曜日まで昼間の最低8時間従事している会社の仕事と解釈すると、今のところ俳句を書くためには必要なものであるけど、事情が許せば、仕事がなくても俳句を書くことはできます。またその「仕事」が俳句の内容に影響することはほとんどありません。

Q2 あなたにとって俳句は「仕事」ですか。
A2 俳句を書くことは楽しみなので、基本的には「仕事」ではありません。本当に何年かに一回、原稿依頼で俳句あるいは俳句関係の文章を書くとき、これは「仕事」かと思うことがあります。
あまりやったことはないのですが、俳句関係の雑巾掛けとかは「仕事」感があります。俳句形式のために何かやるというのも「仕事」かもしれませんが、私はこれらの「仕事」とは今のところ無縁です。

Q3 あなたは俳句以外に「仕事」を持っていますか。
A3 「仕事」を持っています。


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Q:あなたは震災俳句についてどう思いますか。また、どのように関わっていますか。
A:震災俳句という言葉は知っていますが、東日本大震災に関連した俳句に対して興味がないので集中的に読んだことがありません。当時の句会にはそれらしき句が出ていたと思えますが、物忘れが激しくて記憶に残っているものがありません。残念なことかもしれません。
 勤めている会社の工場が宮城県にあり被災したため、震災直後に何度も被災地を訪れました。海辺だがちょっと高いところは津波の被害もなく、地震で倒壊した家も目立たなかったため、ここで、あんな大きな地震が起きたなんて、思えないこともありました。被災した友人と話していると、どこそこの誰々は、本人にとっては非常に大事なことだが、他人が聞くとつまらんことで逃げ遅れて死んだような話しを聞いたりして、これは俳句になるなと思いましたが、やめました。現場にいると見るものがすべて震災に関わったもので、見たものをそのまま俳句にすればすべて震災俳句になったような気がします。そうやってメモ的にいくつもの俳句を書きましたが、やめました。壊れたものや荒らされた景色だけでは作句のモチベーションが上がらなくなってしまったためです。いくら俳句を書いても何も生み出さないし、人の助けにもならない、復興が進むわけでもない。震災俳句って記録としての意味しかないのかもしれません。


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Q1あなたは実際になかったことを俳句に詠んだことはありますか?
A1:いつもなかったこともあったことも俳句にしています。想像力が乏しいため、見たものを基礎に俳句を書くが、書きあがったものは実際になかったものになっています。俳句手帳を持って吟行に行くと、見たものを言葉にすることに徹するので、あったことが俳句になっているような気になりますが、実はそれも嘘なのだろうと思います。

Q2:あなたは俳句で嘘をつくことについてどう思いますか?
A2:倫理的な問題が発生するかもしれませんが、俳句において嘘をつくことは全く問題がないと思います。何を書いてもよしです。たまに句会で、真偽を聞かれることがありますが、基本的には嘘ですと言っています。本当ですという嘘をつくこともあります。

Q3:あなたは俳句における実と虚についてどう考えていますか?
A3:俳句に限らず、人間が作ったものは虚と見えて虚、実と見えて虚。だと思います。どうでも良いことです。読み手がその辺の詮索を書き手に対して行うのも無駄な感じがします。

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