2017-06-25

【週俳5月の10句作品を読む】世界がせいせいと 対中いずみ

【週俳5月の10句作品を読む】
世界がせいせいと

対中いずみ


朧夜のまばたきをみづ這ひのぼる  青本瑞季

句は具体的な像を結ばない。意味はよくわからない。だから私の左脳は反応しない。

けれど、右脳はくすぐられて気持ちよさそうにしている。

「まばたきをみづ這ひのぼる」とは、少しせつなくて官能的だ。

それは「朧夜」の気分そのものかもしれない。


みづかきの昏さにたんぽぽの綿毛  同

こちらも像は景を結ばない。けれども私の右脳のどこかしらがくすぐられる。

「みづかきの暗さ」は水中のものだと思いたい。水よりも少し暗い、水鳥の「みづかき」。「たんぽぽの綿毛」は、白とも言えず灰色とも言えない。あの「たんぽぽの綿毛」色をこんな風に意識させてもらったのは初めて。繊細な感覚がふわりと漂ってくる。


茉莉花や短き電話秘書課より  岡田由季

昔、秘書をしていたことがある。秘書は社の上層部の機密まで見聞きしてしまう立場なので、自づと寡黙になる。ちょっと貝のように閉ざしていなければならない。そんな気分に「茉莉花」は絶妙。あの薄紫の花はめだたないけれど澄んだ香りがあたりを払う。いつも行くセレクトショップの前庭の茉莉花、今年は見逃してしまった。少し口惜しい。

雨後の薔薇大きく息をしてゐたる  岡田由季

五月の雨後は奇麗だ。薔薇のみならず、作者も大きく息をしている。ほんとうは槐の葉だって蚯蚓だってきっと大きく息をしている。世界がせいせいとしている時間だ。

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岡田由季 薔薇屋敷 10句 ≫読む

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