2009-01-04

2009年新年詠(上)テキスト

2009年新年詠(上)

初刷や上に猫寝て寝返りて     池田澄子
泣かしとこのたうつ歌の今年かな  井口吾郎
平治物語絵巻の牛車初雀      伊嶋淡々
輪飾の太き整骨院であり      石原ユキオ
着ぶくれてマストロヤンニふうにハグ 今井聖
旧海軍式敬礼や初明り       上野葉月
太箸や闇ある土地に目を覚まし   榎本 享
おかがみやけふ聴く曲はワルツなり 大場佳子
白くしづもる雑煮家なき人の世に  尾上恵子
蜜姫のちぶ・さ揺蕩ふ鏡割     戒波羅蜜多 麟
日記買う海洋深層水に泡      片岡秀樹
『変身』の手稿は速記読始     興梠 隆
読初の曲目(ライナー)解説(ノーツ)にも名手 小池康生
去年今年ストローほどの縁かな   五百石
かちかちと火点す音の淑気かな   齋藤朝比古
歳旦の梅いつぽんの一分咲き    さいばら天気
屠蘇なめて家長のごとき男かな   堺谷真人
注連縄の蜜柑を剥いて君にやる   佐藤文香
元日のママン僕から洗つてよ    澤田和弥
弾初のピアノに子らのあつまり来  杉山久子
片隅で牛が息はく初山河      鈴木茂雄
元朝の大地は空に開かれて     すずきみのる
読初の好色五人女かな       涼野海音
人類に空爆のある雑煮かな     関 悦史
はつわらひゆいちやんはもうすぐひとつ  田口 武
かがむ子をいぢめる遊び松七日   谷口智行
嫁が君ピアノの中に潜みをる    戯れ子
異国とはうすむらさきの大旦    月野ぽぽな
花の幹斯くもぬくもるお正月    津久井健之
はひはひの子のつき進む淑気かな  鶴岡加苗
テレビなき国へ行きたし去年今年  仲寒蝉
寝姿を撫でては叩く彫初め     中島 隆
工場の裏も七福神巡り       中田八十八
百代の過客と声に大旦       中西夕紀
はつひので あいけんいだくをとこのこ  中原寛也
軒吊りの自転車の錆今朝の春    中原徳子
日輪のベルの鳴りたる初御空     中村光声
うなづいて三面鏡の嫁が君     中村 遥
濡れ縁に母と初日を浴びにけり   猫髭
夜更けての年始帰りへ会釈かな   野口 裕
正月や戻り訛と黒海鼠       馬場龍吉
樹の幹を叩けば音や去年今年    伴場とく子
正月と言われて小鼻むず痒い    樋口由紀子
心根はちよろぎのようなものなれど ひらの・こぼ
よそゆきの部屋着おろして御節食ぶ   廣島屋
朽ち株に実生の檜山初       広渡敬雄
去年今年牛のへのこの長さほど   藤 幹子
屠蘇注ぐや父母ちがふ加齢臭    松本てふこ
仏壇にBARの燐寸や去年今年   三浦郁
餅花や孫曾孫玄孫そろひけり    三宅文子
注連縄を使い回して拝みけり    宮﨑二健
右折待つウィンカーの音去年今年  保田悠詩
凧上がるや資本主義老いぬ     山口珠央
正月や口開けたまま鼻呼吸     山口優夢
人探す眸をしてゐたり猿回し    山崎志夏生
初明り天啓なれば牛後も良し    山﨑百花
淑気いま脳みその溝作り出す    山下つばさ
ショッキング・ピンクあるいは初御空  山田露結
二階から釘打つ音やお正月     雪我狂流
初春やあまきにほひの藁半紙    吉田悦花
靴音は確かであるべし花の春    吉野秀彦
初日の出空一瞬に透きとほる    米元ひとみ
はやばやと閨の灯りぬ初音笛    狼耳
御降をいびつに流すすべり台    渡戸 舫

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