2010-08-22

商店街放浪記36 京都 宇治篇 〔その2〕

商店街放浪記36
京都 宇治篇 〔その2〕

小池康生


昨日のことである。
昨日とは、2010年8月20日である。

また宇治に行った。
宇治はいい。
宇治は淋しくていい。

宇治は高級な街外れである。

わたしの住む大阪で一番暑い町から宇治まで駅to駅で30分。
昼飯を兼ねてちょっくら出掛けたのだ。

前回は、中の島から宇治神社側に出たところまでを書いたが、そちら側の“商店街”を再び歩きに行ったのだ。
以前にも歩いているのだが、歩き足りない。
平等院側の商店街はそこそこ歩きこんだが、こちらはまだそんなに歩いてはいなかったのだ。

そこで、今回は駅から<朝霧通り>と名付けられた商店街に入り込んだ。
<朝霧>である。暦は秋である。しかし、暑い。今年の朱夏は、室内で老夫婦が熱中症で亡くなり、一方では100歳以上の人が白骨化して発見される、そんな夏だったが、この町はそんなことと無縁のような感じ。いや分からないなぁ。日本全国、本当に何が起こるか分からない。

元い。宇治である。
商店街の入り口の<駿河屋>で抹茶入りソフトクリーム300円也を購入。旨い。ペロッとサクッとカリッである。

しばらく行くと<十割蕎麦>という看板が見えてくる。
店の前に行くと、いかにも『ここは・・・デキる・・・』という感じのオーラが出ている。店の名は「しゅばく」
しかし、入口には断り書き。
細かな文章は忘れたが、今は蕎麦をやっていなくて、うどんのみと記されてあった。おかしなことを言うではないか。十割そばとデカデカと看板を上げ、名店のオーラを放ちながら、うどんしかないとはどういうことだ。このまま素通りできないではないか。

入店。右にテーブルが二つ。左に小上がり。奥にカウンター。カウンターの前はガラス張りで、そこが蕎麦打ちの作業部屋、いや、手打ちうどんの仕事部屋。奥に5本か6本太さの違う麺打ち棒が武具のように飾られている。
飾りではなく置いてあるのだが、飾りのように絵になっている。
食べる前から旨いことが分かる。早く注文しよう。

テーブルに着く。
そこには、説明書き。要約すると、国内産の蕎麦粉を使ってきたが、昨年は日照不足で大不作。蕎麦粉が手に入らない。そこで、蕎麦の販売をしばらくやめ、国内産の小麦粉でうどんを作っている。長年磨き上げた蕎麦打ちの技で作ったうどんだと謳っている。
「何になさいますか?」
「すだちと九条ねぎの生醤油海老天うどん」(1,150円)を注文する。

出てきたうどんは―――、ルックスは稲庭うどんに似ていたが、食べてみると麺の割りには腰が太い。しかも強い。けれど柔らかみもあり、のどごしがいい。
旨いのは想像がついていたが、相当なものである。ちょっとお目にかかったことのないようなうどんだ。確かに蕎麦を打ってきた人のうどんだーーーという感想を頭の中に印字する。

しかも、すだちの効き具合と、だしが絶妙である。宇治歩きの定番になりそうな店である。帰りにレジで
「いつから蕎麦をはじめるのですか?」
「まだ。わからないんです」
と申し訳なさそうに言われる。うどんがこれだけなのだ。納得のいく蕎麦粉が準備できたらどんなものが食べられるのやら。
宇治吟行に仲間を誘いたくなる。前回書いた堤から入場料払わずに平等院を見せて上げられるし。

店を出て商店街を歩いていると、自然に宇治川に出る。
いいなぁ。ぱらぱらと人がいて、滔々と川が流れる。
今日は水量が多い。宇治橋に近いところでは、胸まで浸かって釣りに興じる人がいる。鮎でも釣れるのだろうか。
夜には、鵜飼船の出る川である。推測だが、鵜飼用に鮎が放流されるはずだから、鵜に発見されなかった鮎が残っていたりするのだろう。

この界隈、自然たっぷりで優雅。嵐山と同じように昔からの別荘地だろうが、こちらの方が静かでゆったりできる。やはり“外れ”だ。
それに、商店街周辺の家々のデザインが面白く、散策&お宅拝見の趣なのだ。

他人様の家のデザインをおもしろがりながら、宇治神社、宇治上神社を巡る。
宇治上神社は世界遺産。ここから源氏物語ミュージアムにかけては実に優雅な散策だ。

この<宇治市 源氏物語ミュージアム>、こぢんまりとしているが、なかなかおもしろかった。光源氏の邸、六条院の縮小模型など、見ていて飽きない。
『250メートル×250メートルの現物の邸をどこかに再現したら、相当な人気スポットになるだろうなぁ』などと考えつつ、縮小の建物を覗きこむ。

このミュージアムで感心したのは、<映像展示室>。そこで、20分の映画『橋姫』を上映していたのだが、この映像、なかなかのクオリティなのである。白石加代子が出演し語りも担当している。もうひとりの語りは緒方直人。衣装にもロケにも金を掛け、
「一体どれだけの予算だろう」
と思わせる作品で、中でも白石加代子登場のシーンのカメラワークに力が入っている。存在感のある役者さんは、まわりにいい仕事させるのだろう。入場料500円の内、300円以上はこの映画に払っている感じ。個人的には六条院に100円。あとはそのほかの展示物全てに100円という感じだった。

東映作品かとおもいきや、NHKの制作。他の展示室にも二ヶ所映像をかける場所があり、狭い空間を上手に映像で広げている感じがした。

このミュージアムは右半分が有料だが、左半分、ミュージアムショップや源氏語り図書館は無料だから、二度目は左側だけ利用するのもいいかもしれない。
ミュージアムを出ての感想は、「宇治市は金持ちなんだなぁ」ということ。
本当に金持ちがどうかは知らないが、このミュージアムを見るとそう感じずにはいられない。小さな街を盛り上げるのに、〈源氏物語のまち〉と名付け、立派なミュージアムを作り、まったくもって筋が通っているが、実際これだけのものを作れる市はそうはない。老舗のお茶屋が数ある町は、そんなにも税収があるのかと余計な想像をしてしまう。

  秋口と言はねば見えぬ口のあり  康生
                                   (続く)

2 コメント:

さんのコメント...

小池康生様 なつかしい宇治がまたでてきました、
宇治川は、見た目には涼しいですが、川岸を歩くとじつは暑い、本場もんの宇治金時賞味して帰ってください。
また、どこかで、会いませう。

小池康生 さんのコメント...

吟様

メッセージ、ありがとうございます。
宇治金時ですか。
まったく頭にありませんでした。次回訪問の際もこの暑が続いているなら、いただきます。
次回は、茶を攻めてみようかと。

また、どこかでお会いでること、楽しみにしています。

 小池康生