小川春休
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野分して伏見稲荷の駅に居る 『一筆』(以下同)
伏見稲荷駅は、京阪電車における伏見稲荷大社最寄りの駅であり、朱塗りの柱に狐の装飾など、大社を模した独特の駅舎となっている。掲句、決して強風で飛ばされて来た訳ではなく、直接の因果関係はないが、気付くとその駅にいた、という気分が感じられる。
障子貼るお狐さまの風通ひ
来るべき冬に備えて、障子の貼り替えをする。庭先などで水をかけ、ごしごしこすって洗いながら紙を剥がし、新しい紙を貼り直す。お狐さまとは伏見稲荷のことか。御社からの風に冬の訪れの近いことを感じ、実感を持ってその地域の暮らしを思い描くことができる。
この瀧に水戻りたる子規忌かな
降雨の少ない年でもあったのであろうか、水が無くなり、瀧とは言えなくなってしまっていた瀧。それが水勢を取り戻し、再び瀧としての姿を見せている。子規忌を毎年気に掛ける句中の人物の存在が、こうした時間的な奥行きを実感のあるものへと肉付けしている。
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