2013-12-08

自由律俳句を読む 22 荻原井泉水 〔2〕 馬場古戸暢

自由律俳句を読む 22
荻原井泉水 〔2〕

馬場古戸暢


前回に引き続き、荻原井泉水句の鑑賞を行う。

石のしたしさよしぐれけり  荻原井泉水

「したしさよ」の主観ぶりが面白い句か。山頭火の「しぐるるやしぐるる山へ歩み入る」の句と比べれば、井泉水の落ち着いた(?)暮らしぶりが描かれているようにも思える。

わらやふるゆきつもる  同

冬のあり方をそのまま詠んだ、韻律が心地よい句。時代を感じてしまう私は、実は「わらや」の現物を満足に見たことがない。

棹さして月のただ中  同

尾崎放哉もそうだが、井泉水にも月を詠んだものによく知られる句が多い。先に紹介した「空あゆむ」と並んで、この句も井泉水の代表句といえるだろう。

湯女もてすりに、あれは蝦夷へゆく船  同

蝦夷へゆく船を、湯女とてすりにもたれながら見送っているのだろう。個人的には、句の中に句読点があるものをあまり好まないが、掲句では読点が効いているように思う。

誰とて黙ってただただ雪降る世相か  同

当時がどのような時代だったかは、その時代を生きた人にしかわからないとも、後代の人にしかわからないとも言える。井泉水はどのようにして、その時代を想っていたのだろうか。


※掲句は伊藤完吾「荻原井泉水」(『自由律句のひろば』創刊号/2013年)より。

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