2014-03-09

自由律俳句を読む34 内藤寸栗子 〔2〕 馬場古戸暢

自由律俳句を読む34
内藤寸栗子 〔2〕

馬場古戸暢


前回に引き続き、内藤寸栗子句を鑑賞する。

狂ふて鎮まらぬ人に桜咲かんとする  内藤寸栗子

夜の桜の下での景とみた。恐怖を感じなくもないが、桜が咲けばまた彼(女)も鎮まってくれることだろう。

春野のゆくゑの白帆一つが目にしむ朝かな  同

春野の向こうに海が広がっており、そこを走る白帆が目に飛び込んできたところか。爽やかなひとこまとなった。

秋深き雨のしほしほと壁にしみ入る  同

秋雨のしっとり感がよく出ている。「しほしほ」は、いつか自身でも用いてみたい語である。

駅の傍まで海引き入れて町はゆたけく  同

海が駅近くまで迫っている町の様子を詠んだものか。これからも発展して行くことだろう。先の「しほしほ」と同様、「ゆたけく」もまた、美しい語だと思う。

生れ出でて曇り重たき蝶よ  同

蝶が羽化する様を観察していたのだろうか。曇り空の今日にとっては、鮮やかなアクセントとなったことだろう。

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