2014-03-23

自由律俳句を読む36 『新墾』 〔2〕 馬場古戸暢

自由律俳句を読む36
『新墾』 〔2〕

馬場古戸暢


前回に引き続き、『新墾』句を鑑賞する。

温度差の違う両家に孫生まれる  天野三枝子

片方の家では孫フィーバーが巻き起こり、もう片方の家では「あ、そう」で終わってしまったのだろう。こればっかりは、仕方がない。

こんないい月が嘘つき  荻島架人

意味はわからないが、「月」と「つき」をかけているのだろう。そんな月夜もあろう。

手水打つ庭を群飛ぶ赤とんぼ  野上サダ子

夏の終わりのひとこま。井上陽水の「少年時代」が流れてきそうである。

久々の娘の太鼓で炭坑節  成重容代

炭鉱のまちで生れ育った方の句か。日々の暮らしの中でも、たまにこうして踊っているのかもしれない。

ノラに避妊の猛暑なり  竹本照子

猫が人間社会の中で生きて行くには致し方ない避妊手術。この猛暑に、作者も思うところがあったか。


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