2014-11-02

落選展2014_8 クレヨン 倉田有希 _テキスト

8 クレヨン 倉田有希

船を描くクレヨンの白春の雷
口紅を塗る兄とゐて花筏
桜撮る人撫で肩で遠ざかる
鉄アレイ鱒の生身の匂ふかな
輪唱のやうな発光蛍烏賊
春深し雲の絵皿のオムライス
蝌蚪の国豆腐のパックが沈みをり
春昼の雨落ち石と飾り石
聖歌隊身を寄せあつて雀の子
菜の花やトロッコ列車の駅の跡
鎌倉の坂に猫ゐる花蘇芳
表札のなき門柱に青蛙
向日葵の影を慕ひて三輪車
母がいま包丁をもて鳳梨かな
昼時の海月と人が浮かぶ海
太陽を紺の水着は吸ひにけり
砂日傘もうどうにでもなれ雨か
人体を水はあふれて夜光虫
琉金のみる夢白き飴細工
零時かな猫の瞳と夜盗虫
夕立のあとの古書街鳩三羽
著莪の花前行く人の競歩かな
賢治読む人の耳たぶ山葡萄
すずむしや共食ひのときみなしづか
子の握る銀玉鉄砲ななかまど
椎茸の軸の肌色素十の忌
老犬の巻き尾日毎に天の川
秋風や中濃ソースの白き蓋
文化の日焼きそばパンの香り立つ
かなかなや今日会ふ河童の碧色
椋鳥のコンクリートに声残す
車座に少女も二人西瓜かな
小鳥来る解体される給水塔 
甘鯛のあがる漁港にマリア像
冬座敷母のウィッグの丸い箱
軒氷柱うすむらさきの朝陽かな
人参と同じ太さのドリンク剤
手品する双子姉妹の黒ショール
消火器と土間に一山赤き蕪
蝋石で道路に描く絵冬の蜂
日脚伸ぶ綿菓子も売る煎餅屋
寒空や象舎のことに太き柵
クレヨンの折れて冬日の匂ひかな
鉄棒の向うはジュラ紀の寒茜
初夢はもらはれてゆく猫のこと
繰りかへす家の歴史や雑煮餅
獅子舞のうれしげな歯の並びかな
独楽回す子供の手首やはらかし
ガラス越し鳥見る人の春着かな
どの人も白き喉して初句会

1 コメント:

四羽 さんのコメント...

口紅を塗る兄とゐて花筏
口紅を塗っているのは兄自身なのか、あるいは自分、あるいは誰かに塗っているのか。BL読みというのが一部で流行っているようだが、そういう読みもできるだろう。ただあえてそういう枠を設けずとも、微妙な淫靡さの重ね合わせを楽しめばよいのだと思う。

小鳥来る解体される給水塔 
小鳥は来るが、給水塔は解体される。来る小鳥には、祝福の予感がある。古びた給水塔には、かつては生活があり、歴史があったが、解体される。幸福な滅びの美学もあるのかもしれない。

どの人も白き喉して初句会
艶めく喉の描写によって、着物で集う華やかな場面をあらわしている。白い喉のやや陰性のエロチシズムと、初句会の陽性の祝祭感の対比のセンスがいい。

映像的な表現がみずみずしく、ばちっと決まれば絵が脳裏に鮮やかに浮かび上がる。視覚以外にも広げていくと面白いかもしれない。