林田紀音夫全句集拾読 016
野口 裕
鳥葬の夜空ひろがり五月くる鳥の死に出会ったことから、鳥に屍をゆだねる「鳥葬」に連想がおもむいたのだろう。死が開放感をともなう感覚。忘れがたい印象を残す。
幼くて血の色映える鼓笛隊鼓笛隊が真っ赤な服装をしていた、というだけの話なのだろうが、「血の色映える」にはどきりとさせられる。鼓笛隊の歴史的な出自には、軍隊が絡む。そうした、想像が働いたかもしれない。
軍手は死に曇天のまま軒暮れる「死に」の代わりに「垂れ」とすると、まったくの描写に終わってしまうのだが、「死に」を入れただけで風景が俄然すごみを帯びてくる。なおかつ、やはり「軍」なのだ。
●赤煉瓦はこぶひとりに巫女の影一読、一体どういう意味なのかと悩んだ。結局、神社の補修にかり出された人足に巫女の影がさしかかったと読んだ。
赤煉瓦に神託を連想し、巫女との関係も想像したくなる。影がひとりを選んだところに、そうした読みの余地がある。
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