西原天気
いま私が持っている毛呂篤句集は4冊。
悪尉 昭和50年 端溪社 限定200部のうち第92番
灰毒散 昭和52年 端溪社 限定部100部のうち第93番
白飛脚 昭和54年 季節社 限定222部のうち第81番
俳白 昭和57年 季節社 限定300部のうち第207番
まず、『悪尉』。

函が頑丈。象が踏んでも毀れないのでは?と思うほど頑丈。

見返しは、真っ赤な腰巻きみたいな赤。化粧トビラが重厚。

序文は金子兜太。

栞も重厚な意匠。栞文は、堀葦男ほか。
次は、『灰毒散』。

頑丈な函に、商標を模した意匠で書名が入る。
曰く、
<効能>俳熱冷し・句癰・其の他諸毒降し
<用法>毎觸後さゆにて服用・注類似品
にしても、この句集名、灰毒散は、インパクト、あるなあ。

本体は表紙の四隅と背表紙に皮革を使い、重厚。
どの本にも言えることだが、函も本体もがっちり硬く頑丈な造り、にもかかわらず、本体の出し入れがスムーズ。びっちびっちでなかなか出てこなかったり、逆にゆるゆるだったり、と、ここは難しい造作なのだが、毛呂篤の本は、名工が誂えた抽斗のように、函と本体の関係が良い。職人さんがていねいに造本しているのかも。

本文は、1ページ一句。毛呂篤の句集は、基本、こう。
太い明朝体で、紙のどまんなかに、ずどんと一句、収まる。
なにかで、毛呂篤は、句を捨てない、と読んだ(本人の弁)。多作多捨の逆。毛呂篤という作者と一句一句が濃厚な関係。句への(愛息・愛娘のような)溺愛。1ページに二句以上を収めるなんて、とうていできないのだろう。

奥付の意匠。これには、シビれる。

『白飛脚』は、クロス張りの帙(ちつ)と本体。栞2部を挟み込み、ここで紹介する他3冊とは、趣が異なる。
和モノのカラーリングが、渋い。

一句一句が、ここまでていねいに晴れ着を着させてもらっている。どの句も幸せにちがいない。

『俳白』は、本体、革装。赤と黒のトーンが、たまらない。
書籍への物質的な愛情(フェティシズム)で所有するなら、この一冊、かもしれない。美しいとしか言いようのない本。

蔵書票(エクスリブリス)を気取った銅版画一葉を挟み込む。
んんん、ぜいたく。かつ、おしゃれ。

トビラ。書名2文字のライトグリーンが、映えまくっております。

本文組版は、さらに重厚に。
紙質をお伝えできないのが残念でなりません。触れるたび、めくるたび、指の腹が、うっとりとなります。
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というわけで、毛呂篤の本4冊を紹介してまいりました。微妙な色合いや質感は、ここに並べた写真では伝わりきらないと思います。
ご興味のある方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょう。本って、こんなに美しいものなのかと思われるにちがいありません。古書で、安くはないでしょうが、法外な値段でもなく入手できるはずです。
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