新年詠2012
初春の子犬の足に尾に子犬 赤羽根 めぐみ
初景色その片隅に忘れ傘 小豆澤裕子
若水の謀議のごとく流れけり 五十嵐秀彦
孵りたかったであろう数の子夜が深む 池田澄子
ただのしかばねのようなわたしに年賀状 石原ユキオ
二人より一人に近き冬の海 市川未翔
青空や鷹現れて風新しく 今井肖子
据はりよき方が正面鏡餅 今村恵子
ニッポン放送に隣るモスクワ放送冬 今村 豊
ぽっぺんを吹くや片方つけまつげ 上野葉月
赤き実のわづかに土間の飾かな 宇志和音
初星とコンビニの灯と響きあふ 大井さち子
初旅の足湯して待つ市電かな 太田うさぎ
残り福買うて繰り出す食ひ倒れ おおにしまこと
手毬抱き観音堂へ消えにけり 大野朱香
横に寝て横の長さや淑気満つ 岡田一実
対岸へ声を飛ばせるお元日 岡田由季
傀儡廻し月の方へと曲がりけり 岡野泰輔
初春の雨うどんやの置手紙 岡村知昭
去年今年撫でれば歪む犬の顔 岡本飛び地
新春の鯉気を抜くと浮いて来る 小川春休
謹賀新年プリンなら好きかもね 小川楓子
何はなくとも日本のお正月 沖らくだ
四方より鳥居を照らすラブホテル 御中 虫
けものみちゆゑに選びぬ去年今年 櫂未知子
水葬の川鳥葬の空初景色 片山由美子
ローソンへ破魔矢の鈴を鳴らしつつ 金子 敦
初鏡見覚えのなき指の跡 川崎益太郎
楪のいつそう紅き日暮れ前 川嶋一美
寅さんの背広は同じお元日 河野けいこ
くぐり戸のくぐり軋ませ初湯殿 菊田一平
初鏡母が後ろに立つてゐる 北川美美
初空やよくぞ鴉に生れたる 岸本尚毅
炬燵真赤やひろげてぢごくがきやまひ 金原まさ子
捨つるもの捨てきれぬもの去年今年 櫛部天思
人日や聖一物の勃るべし 九堂夜想
削り器は鉛筆咥へ去年今年 久保山敦子
雪籠引くことのなき百科かな 熊谷 尚
不器用を改められず初神籤 倉田有希
ボルダリングジム静寂という淑気かな 栗山 心
御降りやみしみし歩む山の上 高坂小太郎
「初詣に行こう」差し出すヘルメット 神野紗希
初夢の只中ご飯炊き上がる 小久保佳世子
読初は漱石句集鼻毛切る 小西昭夫
切山椒夜警番屋の卓袱台に 小早川忠義
どの部屋もゾンビ居りけり初ゲーム 小林鮎美
雑踏を獅子頭めく男ゆく 小林苑を
ここでなく遥かへ春着携へて 小林千史
貳千十二年始まる震度四 駒木根淳子
シャー芯のかちちかちかち去年今年 米男
初日記うつくし無とは無敵なり 小柳 文
初御空へと酒臭き息を吐く 近 恵
初御空ことば幸はふ国に立つ 近藤栄治
しろがねの郵便受の淑気かな 齋藤朝比古
雪舟を観るアメ横のスルメ背に 斎藤悦子
極上の白紙いちまい大旦 堺谷真人
ローリングストーンズ聴いてなまはげに 榊倫代
ペンギンも人もぞろぞろ来て初日 阪西敦子
晴天や飛ぶ気もなくて初鴉 嵯峨根鈴子
パラボラアンテナ凝視してゐる初御空 笹木くろえ
万両の小粒を愛しと地蔵かな 佐藤明彦
なんかえらい雑煮んなつちつたがゆるせ 佐藤文香
鯛焼の骨の話はまたいつか 佐間央太
しんしんとハリマオ忌まで海の旅 佐山哲郎
ぼくたんのおしりぷるぷるお元日 澤田和弥
福引のちひさきものをもらひけり しなだしん
人よりも神あまたなり山始 柴田佐知子
点睛を太陽とこそ初浅間 島田牙城
伊勢海老のひげの付け根や自由自在 清水良郎
初御空三十路の吾子に華の嫁 下山田禮子
消費税率あがるらし餅伸ばし喰ふ 杉山久子
初空を映してをらぬダムの水 杉原祐之
初刷の景色がすでにずれてゐる 鈴木茂雄
四十年後まで憂ふ二日かな 鈴木不意
初凪の海へ天より光の鍵 すずきみのる
読初のメロスまだまだ走りをり 涼野海音
忘れたきもの眼前に初明り 関 悦史
「うなぎ串長」匂ひふるまい四日はや 関根誠子
初詣松毬を拾ひけり 瀬戸正洋
たんぽぽの絮飛びきつてお正月 対中いずみ
地球儀は凹凸のまま去年今年 高崎義邦
硬く青く一月一日の呼吸 髙勢祥子
一月や父のかなしみいま届く 高梨 章
鎮魂の笛の音澄し里神楽 高橋透水
子の部屋の雨戸は開かず初雀 田口 武
御降りに甍の波のしじまかな 伊達浩之
初空にもつとも澄んで杉・天狗 田中亜美
英霊の遺族減りゆく初山河 谷口智行
福引のゆつくり落ちる赤い玉 茅根知子
あの世から初電話来ぬかとおもふ 津川絵理子
元旦の空元旦のビルディング 月野ぽぽな
武蔵野を謡ひ流るる初雀 津久井健之
青年も老いを寿ぐホイコウロウ(回鍋肉)筑紫磐井
おほぞらへこひしこひしと羽子の音 常盤 優
初夢はボーキサイトになっている 十月知人
故郷や賀詞の行き交ふツイッター 内藤独楽
ものの影ものをはなれてゆく初日 仲 寒蝉
目の澄みて光まぶしき初景色 中塚健太
密漁の話やお降りの中で 中村 遥
元日の入日に我を晒し居る 鳴戸奈菜
淡水と海水出会ふ淑気かな 西丘伊吹
乗初やつくづくここは西日本 西村麒麟
創刊号初日の勢いもて航けよ 西村睦子
昔造りの酔ひ心地よき年酒酌む 猫髭
冬木湧く思いを朝を迎えたる 野口 裕
淑気満つ地獄の門のこちら側 橋本 直
木の国の御下がりに石割れゆける 花尻万博
金襴の花鳥を撫でて初昔 原 雅子
僕は猫女礼者に匂ひづけ 林 雅樹
繰り返す子どもの遊び初比叡 日原 傳
見当識うしなつてゐて去年今年 廣島屋
初空や襷もろとも走り出す 広渡敬雄
ハツユメノナカデボーカロイドミタイ 福田若之
四色に分かるる家族絵双六 藤 幹子
象に乗る飯島晴子初夢は 藤本る衣
初夢をあへて形にすれば河馬 渕上信子
仮名のなき漢語の国のハピニューイヤー 細川洋子
心臓に杭打つごとく鏡割 堀田季何
初空や鍵を鳴らして出勤す マイマイ
初空に鋸山の尾根広ぐ 前北かおる
無意識に正月といふ虚構かな 増田 守
御降なればあがつたりさがつたり 松尾清隆
寝入る子の口動きをる淑気かな 松野苑子
御用始めの夜の新宿歌舞伎町 松本てふこ
元旦のかに道楽のこはいかに 三島ゆかり
マフラーを巻いて理性はここに在り 宮岡絵美
凍滝のなかはひそひそしてゐたる 宮本佳世乃
天竺へ行くと言ひ張る才蔵は 村上瑪論
恋文めきて肉筆の賀状かな 望月 周
凍てし扉の歩めるやうに開きけり 森賀まり
新年や太平洋に雨すこし 矢口 晃
横髪の撥ねを湯で蒸す四日かな 矢作十志夫
元日の朝湯に呆くる 矢野風狂子
とりあへず拳骨で割る初氷 山崎志夏生
表裏なき影貴しや初日の出 山﨑百花
凧凧凧凧大気圏脱出中 山下彩乃
四日はや夕暮れはたわしの感触 山下つばさ
ゆく年の夜の光つたら押すボタン 山田耕司
初鏡に映らぬものを愛しめる 山田露結
人の日の人なつかしく集ひ来る 山西雅子
初御空日本列島龍に似て 雪井苑生
二日かな刀の鞘の反り具合 雪我狂流
冬帝の鎌倉山を抜けにけり 吉田悦花
元日やバイクすべてに銀シート 四ッ谷龍
うぐひすをとらへたること淑気かな 依光陽子
妻映すバックミラー去年今年 D L リンズィー
少年の眠りは春の金平糖 わたなべじゅんこ
龍の腹うねりて太し鱗鳴る 小澤實
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