【週俳2月の俳句を読む】
働かざる語在るべからず
中村安伸
第250号 2012年2月5日
【『俳コレ』作家特集】
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第251号 2012年2月12日
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第252号 2012年2月19日
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2012-03-18
【週俳2月の俳句を読む】中村安伸
いっぺんに言葉つかって花の洞 谷口慎也
「いっぺんに言葉つかって」というフレーズから思い浮かぶのは、俳句作品を作っているときなどに訪れる一種のトランス状態。次から次に言葉が湧き 出してくる興奮状態が続いたのち、ふと我に還った瞬間の空虚な心理を「花の洞」という語が象徴しているように読める。身体を動かしたあと微風を受 けるような心地良い空虚感である。
亀泣くや水飲んでからチューニング 中山奈々
弦楽器奏者が演奏の直前に行うチューニング。人それぞれにやり方は違うが心理的に重要な儀式であることは共通している。水を飲むという日常的な動 作から演奏という非日常へと移行していく過程を巧みに捉えた。チューニングそのものが単なる音を音楽に使える音にしてゆく過程である。配合された 「亀泣く」という季語が問題となっているようであるが、ウエットな感情に結びついた「泣く」という表記には、これから演奏される音楽を予感させる 働きがあるのかもしれない。
西友にぺとりと売られ草の餅 小林鮎美
連作として読むと、コンピューターシステムという非常に多くの要素が絡みあった怪物を相手に苦闘する作中主体の姿が浮かび上がる。この句の眼目は 「ぺとり」というオノマトペがどのように効いているかという点である。休憩時間に近くのスーパーで買い物をするときを含め、片時も仕事への意識が 途切れることはないであろう。そんなとき目に入ってきた草餅の扁平なかたち、ぬるりとした光沢。それを作中主体の分身とまで深読みすべきではない だろうが「ぺとり」の表現力はなかなかのものである。
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