【週俳5月の俳句を読む】
水にまつわる物語
五十嵐義知
寝台車夏の冷たい人の手が 佐藤文香
水に包まれるという記憶があるとすれば、海やプールで潜水した時の記憶であろうか。 ―光りが差し、水面も近くに見えるのに、もうこの水中からは抜け出せず、光りの届かない冷たい水の底に落ちてゆく。その瞬間に手や足が何かを摑みあるいは蹴り、勢い水面に姿を現す。―
眠っている間に移動するという寝台車の利点はそれとして、夜の暗闇の中を走る車両は、さながら深い海の底を走るようでもあり、普段は見られない深夜の駅舎の様子を窓から覗いてみたくなるということはないだろうか。
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