自由律俳句を読む 61 松宮寒骨〔1〕
馬場古戸暢
松宮寒骨(まつみやかんこつ、1883-1968)は、金沢出身の自由律俳人。『朱鞘』を経て『海紅』に拠り、『三昧』創刊に参加。以下『自由律俳句作品史』(永田書房、1979)より、数句を選んで鑑賞したい。
明日は刈らるゝ杉山しづかに夕映えてゐる 松宮寒骨
「しづかに」の主観に、惹かれるところがある。この頃にも、花粉症の人はいたのだろうか。
森静かに秋の昼わが足音なつかしくきく 同
「静かに」の主観には、惹かれるところはあまりない。むしろ、「なつかしく」の方が面白いように思う。森歩きは、かつての寒骨の日課だったのかもしれない。
青空に向ひ寝転ぶとけ行く如し心地よし 同
前二句と同様、この句にも寒骨の感情がそのまま入ってきている。よほど青空の下が気持ちよかったのだろうか。
あんずがなつている下をたゞ歩いて来たばかり 同
現代に生まれた自身にとっては、「たゞ」は憧れの単語のひとつである。いつか何かで格好よく使ってみたいが、どのように用いても格好悪くなってしまうだろうとも思う。
秋まひる庭を這ふもの小亀なり首をふりふり 同
いつの日か、亀と暮らしたいと考えている。庭に亀がいる生活は、さぞかし楽しいことだろう。一緒に首をふりふりしながら、秋のまひるを過ごしたい。
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