ブラジルあたり
吉野秀彦句集『子雀』の一句
上野葉月
月はいまブラジルあたり草を刈る 吉野秀彦
あたりという言葉を自分は俳句で使ったことのないせいかとても気になった一句。
草を刈ると言っているからには昼の光景である。
月に心惹かれる季節とは言え残暑厳しい感じか。こちらは昼で暑苦しいのに、地球の裏側は夜で月光を浴びるがごとくなのかもしれない。
そういうやや込み入った感慨を月はブラジルあたりと一言で処理。
地球から月までの距離は40万km弱と考えていいから、ブラジルと日本の実質的な距離である地球の直径1万km程度は誤差の範囲とも言えるのだが、その物理的な位置関係を置き去りにして「ブラジルあたり」とザックリと言い切ってくれているところがここちよい。
詩的感興とは異なる味わい。俳味なのか?
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