第520号 虎
山中西放
俳人は句作に行き詰まったら動物園に行けとよく言われたものである。
とは言え近年旭川動物園に始まった動物園の人と動物との触合いの形の変革はそのイメージに変化をもたらしたかも知れない。
この動物園も例外なく頑丈な檻の鉄柵の一面がガラス張りに替えられた結果、極めてリアルに動物と接しられるようになった。
普段この檻の虎は檻の中を一日中休み周回しているが、この日はたまたまガラス越しに中二階で寝そべっていた。にも拘らず、その容姿には後ずさりしたい怖さがあった。それは人類と虎との長い歴史の作り上げた肉感であろうか。
近くに雌を亡くした老ライオンの悲しい号吼が途切れ途切れに響き渡っていた。
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