作品20句
手がきれい
上田信治
手がきれい 上田信治
影がもう秋で干されてビニル傘
夜の海フォークの梨を口へかな
冷やかや口で感じるものは味
カンナ咲く小学校の長さかな
鯊の秋チョコレート色ばかりなり
秋晴のふと目をさます鸚鵡かな
菊咲けよ小学生は手がきれい
秋汐の小石の浜にうねる岩
落花生割つてこれから献血など
渡される紙にりんごと書いてある
額入りの仔牛の写真花八つ手
葱になる白から青へ生えてきて
トラックが船に似て冬あたたかし
さいきんは夕方のこの冬の道
石蕗の花縦ブラインドやや乱れ
歯が寒い冬たんぽぽを見つけたり
西口のひかり重なり冬のバス
温室でうつそりと出す長財布
そろそろ行かうか冬の漁港は置いたまま
看板が冬日に光つてゐて読めない
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