2019-08-11

【句集を読む】首を打つ ふけとしこ『眠たい羊』の一句 西原天気

【句集を読む】
首を打つ
ふけとしこ眠たい羊』の一句

西原天気


向日葵の首打つ雨となりにけり  ふけとしこ

花でも葉でもなく首を打つというのだから、どうしても打ち首(斬首刑)のイメージが脇から響いてくる。

おまけに、向日葵だから、

  向日葵や信長の首切り落とす  角川春樹

も連れ添うように響いてきて、掲句にバロックな趣きが加わる。

いっけんすんなり見たままを詠んだようでいて、多声的(ポリフォニック)な仕掛けが凝らされて、愉快。

下五「なりにけり」の古格めいた処理も、オーソドックスを装うに効果的。


ふけとしこ『眠たい羊』2019年7月/ふらんす堂

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