【週俳2020年新年詠の一句】
真剣な遊び
野口裕
正月のばば抜きは真剣にせよ 龍翔
正月、子供達が集まって遊び出すとつい度が過ぎて大人の誰かが叱声を飛ばす。そんな時に、愚生の記憶では、「ほたえるな」という言葉が登場してきたように思う。
しばしば、「ほたえな」とも。「ほたえる」は西日本各地に伝わる方言で、ふざける、甘える、つけあがるといった意味を有する。叱声の場面では「つけあがるな」 と意味がほぼ重なるだろう。
「ほたえるな」のあとに続く言葉は、「真面目にしろ」や「静かにしろ」となったが、「真剣に」とは言われなかった。
カードゲームを真剣に行えば口数は少なくなり、真面目や静かにつながるのは確かで、「真剣にせよ」は、遊びは真面目なものであるとする「ホモ・ルーデンス」をも彷彿とさせる。
遊ぶなら真剣に遊べという発想が登場してきたのは、1970年代以降と記憶しているが、「真剣にせよ」は発想の変遷を踏まえて出てきた言葉か。
あるいは、ばば抜きがカードゲームの名ではなく字義通りの意味なら、親族の誰が親の面倒を見るかと言い合う場面になる。
そうした時でも、緊張感なく冗句の応酬で実利を得ようとするのを思わずたしなめたとも読める。
「ばば抜き」に意味の二重性があることで、表面上の意味も翳りを帯びる。真剣の「剣」がちょっと怖く思えてくる。ある意味、お正月に相応しい。
≫2020年新年詠
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