【週俳2020年新年詠の一句】
美中年の風貌
中田剛
黒豆や孫たちまちに美中年 楠本奇蹄
はじめ〈美中年〉は作者の造語かと思ったが、インターネットで検索したら出てきた。とくに違和感はないが〈美少年〉ほどの馴染みもない。〈美中年〉の孫(私は男性を想像する)を眼前にしているのだろう。〈美中年〉の孫が仮に40歳だとすると、その親が60代半ばから後半あたり。ということは更にその親の親である作者は90歳を超えているか。〈超美老年〉の作者が〈美中年〉の孫と、お節を囲んでいる光景。じつにめでたい。ただ〈たちまちに〉に浦島太郎の匂いもそこはかと。ということは、現実の年の差を考えなければ只今〈美少年〉の眼前の孫に、おそらくまみえること叶わぬ〈美中年〉の風貌を恍惚と幻視しているとも読めなくはない。いずれにせよ、此の世のことはおおむね夢の如くにて。
≫2020年新年詠
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