【句集を読む】
川に行って石があれば
寺澤一雄『虎刈』(1988年)の一句
西原天気
あげは蝶さはると熱き河原石 寺澤一雄
触覚を中心に置きながら、大きくひらけたあかるさや光のゆらめきのようなものが見える句。視覚以外の回路から視覚効果へと到る。俳句でしばしば起きる俳句的愉楽。
『虎刈』は牧羊社の「処女句集シリーズ〈全50巻〉」の「20」として刊行。A5判・本文72頁と比較的薄手。小林恭二による「序」のあと、章立ては、夏、秋、冬、新年、春と続き、雑、笑の章立て。無季の句で構成した「雑」を設けた点、特徴的だろうか。「笑」の章は有季も多く含む。季節名を宛てた他章とは意味合いの違う句を並べたとも類推できるが、「後書」その他にも説明はない。
以下、気ままに何句か。
クロールで行きて帰りは平泳
新しき薬罐届きぬ秋風裡
極寒やあんなところに鳥鳴いて
肛門で腸終りたる初茜
虎刈の頭は春の頭なり
この部屋も隣の部屋も北枕
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