【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
T.Rex「Telegram Sam」
天気●なんだか、ブギーな気分なので。
天気●はい、T.Rex「Telegram Sam」(1972年)でした。って、ラジオっぽく。T.Rexって、10代の頃、えらく流行った。イギリスのロック・シーンから、なにかこう突然て感じで、つまり、それまでと繋がりがなく見えた。
憲武●初めて聴いたのは、当時1972年頃日曜の朝ラジオで黒沢久雄のやってた、ポップスベストテン的な番組だったかと思います。「イージー・アクション」が毎週かかってて、「HEY! HEY! HEY!」という調子のよさと共に、なんかこうフェスティバル的なものを感じて、魅力でしたねえ。
天気●音の感じは、この頃、同じく「グラマラス」と形容されたデヴィッド・ボーイと同じ成分も感じられるのですが、ちょっと違う。ポップに振り切った感じ。
憲武●そんな感じしますね。デヴィッド・ボウイはポップなんですが、僕にはちょっと暗くて、ソリッドで馴染みにくかったんです。
天気●T.Rexといえば、今でもやたらジングル(短い効果フレーズ)に使われる「20th Century Boy」のイントロとかがあるんですが(これ、これからもずっと残りますね)、この曲を選んだのは、音がびっしり埋まっている半面、ぺらっと薄く軽い感じがするのが面白い。
憲武●あと、「メタル・グルー」もだいぶ使われてる気がしますよ。ディレクターが同世代なんでしょうね。
天気●シンプルなブギで進行してから、サビになると、ストリングがかぶさって、ちょっと不思議でイギリスっぽい響きになるとこも、面白い。
憲武●なんかこう楽しいんですが、物哀しさもあって、そこに惹かれますかね。
天気●T.Rexはほぼマーク・ボラン(ボーカルとギター)ひとりのバンド。その彼が1977年に29歳で死んだ(交通事故)こともあって、活動期間ほぼ10年と短い。残した音源も少ない。今では、さっき言ったジングルの「20th Century Boy」イントロくらいしか人の耳に届かないのですが、なんだか、徒花っぽく、美しい音にも思えてきたんです。
(最終回まで、あと682夜)
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