対中いずみ
一日百句とはいいながら、裕明は百句に至らなくても悠々としていたようだ。『しばかぶれ 第二集』(邑書林)、島田牙城特集に牙城はインタビューに答えて語っている。
「だいたい泊まりがけで、どこかへ行って、一晩で百句作るぞ、という会ですね。面白いもんで、俺なんかはガチガチに百句作るぞって意気込んでいくんやけど、裕明なんかは五十句も作らへんねん。そういう裕明のゆるさ、というよりは大らかさは、宇佐美魚目譲りですね」「吟行。必ず吟行でしたね。嘱目で、と。だから裕明は数作らへんわけよ。宿帰ってから、なんかくにゃくにゃと書いて。」
百句会のはなしではないが、「「青」の系列でいうと僕は爽波系なんだ。青蛙はたぶんあきら寄りで。裕明は魚目だった。その三人で集まって楽しく過ごしたね」とも語っている。
第292号では雑詠欄巻頭に、以下が掲載されている。
ラグビーの選手あつまる桜の木
青写真駅のホームが濡れてをり
水涸るる上に道あり人通る
栗の木の下に屈みて息白し
産土神へ懸けしばかりの菜もありぬ
大根引く人三方に立ちにけり
※太字は第一句集『山信』に収められている。「水涸るる」は、「鞍馬」と前書きを付し、「水涸るゝ」に改められている。
0 件のコメント:
コメントを投稿