暮らしの歳時記 鮨 (編註1) ……山本勝之
相模湖(編註2)での句会から帰ってくると、部屋の真ん中に死体が転がっていた(←コ、怖いー!)。じゃ、なくって、敷き布団が丸まって転がっていた。布団の真ん中当たりを、古いベルトでぎゅっと縛ってあって、太い電信柱か、死体のようである。
そういえば、昨夜、寝る前に「人間寿司」をして、そのまま、寝てしまったのであった。
「人間寿司」とは、知らない人の為に一応説明しておくと、丸めた布団をシャリに見立て、客役の人が「トロ!」と注文すると、家中の服やら、端切れやら、タオルやらひっかきまわして、赤いものを身にまといネタの「トロ」として、「ヘイ、お待ち!」と言ってシャリの布団の上に寝っ転がる遊びである。
昨夜は「客」もいないのに、一人二役でそれをやったのだなぁ、いい歳こいて…。部屋に脱ぎ散らかされた、赤のストライブのセーターや、銀色のジャンパーを見て「エビ」も「コハダ」もやったのかと、ため息が出た。
せっかく、気持ちよく相模湖からかえってきたのに、ああ、イヤなものを見た。「かどや」のM江さんと、ホテル「野猿」(編註3)あたりにでも、逃避行しておくんだったと、後悔しきり。
(筆者註:以上はフィクションであり、事実と似ているようなことがあるとすれば、ほんの偶然です)
(編註1)夏の季語。『日本大歳時記』(講談社)「鮓」の解説(松本旭)にはこうある。……(前略)鮓が夏の季語となったのは、馴鮓に使う酢が暑さに耐えるといわれるからである」。
(編註2)相模湖→詳しくはこちら。
(編註3)ホテル野猿→資料写真
■■■
2007-06-03
暮らしの歳時記 鮨 山本勝之
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 comments:
コメントを投稿