2007-11-04

第28号 2007-11-4 10句作品

 ゑのぐの指  鴇田智哉


風上にゐて目の玉の冷えてゐる

とび降りてしまへば秋のゆがみたる

蚯蚓鳴くゑのぐの指を洗ひをり

秋の夜の赤いボタンを押してみる

芋虫のこもれるさまを空のなか

屋上に秋の蛹が横たはる

ひとときをとばし読みして風のいろ

草の香にあしたのことを思ひつく

月面が芒を過ぎてから見ゆる

十月の壁が染まつてきてをはる



 月の山   久保山敦子

羽の国の羽毛のやうな鱗雲

新蕎麦や簾の外のよく見えて

ひと雨のあと十月の法師蝉

わがままを通すままこの尻ぬぐひ

舟唄の最上はよけれ新走り

蟹の罠しづめて岸の薄もみぢ

山寺は石の寺秋澄みにけり

天にあるごとき秋風五大堂

色鳥や家より古りし屋敷林

これよりの月太りゆく月の山

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