10句作品テキスト 大石雄鬼 狐来る

　 狐来る　　　　大石雄鬼

溝蕎麦の枯れしそこより山となる
ふるさとに落とし蓋して狐来る
ワイパーのぎしぎし鷲の降りてきし
少し皮膚ふくらみ冬のダムに立つ
桃の種ほどの暗さの鼬かな
狐見て着物の裾の合はざりし
乾鮭の置かれてゐたる神の膝
むささびの鼻のひろがり夜が来る
熊の目の島のごとくにまばたきす
狼の裸になつて絶滅す

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