2008-12-28

週刊俳句2008年アンソロジー

年代別
週刊俳句2008年アンソロジー 91人91句

※新年詠、週刊俳句賞応募作は割愛させていただきました。
※年齢に誤認があるかもしれません。ご海容ください。

80代

空中にきりぎしがあり薔薇垂らす   八田木枯  第59号

70代

空港の最上階で花種買ふ   大牧 広  第47号

地芝居のポスターに雨横なぐり   桑原三郎  第73号

豆撒いてこれは戦争の練習   横須賀洋子  第48号

よし分った君はつくつく法師である   池田澄子  第74号

真っ先に芽吹きもっとも寂しい木   伴場とく子  第55号

海鞘食ってどぶんどぶんと老いてゆく   斉田仁  第84号

瑠璃蜥蜴草葉の蔭を出入りする   望月哲土  第61号

60代

双眼鏡・硯・地球儀・獺祭忌   武井清子  第75号

水に影それよりあわき四国かな   大本義幸  第86号

あたらしきぬかるみにしてえご落花   千葉皓史  第65号

鳥の眼のなかのカンナを切りにゆく   鳥居真里子  第78号

50代

歳末のチンドンデン助ではないか   小林苑を  ウラハイ

箱庭や地球の夜は影なりき   丹沢亜郎  第64号

合鍵を忘れてもどる寒さかな   仁平勝  第86号

眼を抉り能面となる涼しさよ   奥坂まや  第65号

首刎ねよ首を刎ねよと百千鳥   菊田一平  第56

家に帰ろう桃が腐っているよ   中村十朗  第73号

砂浜に舟の擦りあと雁渡る   馬場龍吉  第76号

光琳の兎も見えて冬の月   中西夕紀  第83号

野茂英雄たる産後の雌牛積乱雲   笠井亞子  ウラハイ

縁側を風が流れる遠花火   田口武  第71号

塩を炒る火を落したり雁の声   中村遥  第79号

来し方の暮るるや小屋の夏燈   大野朱香  第62号

とうきびの刈られて青い封書くる   中山宙虫  第81号

曇天を大きな桃の実と思ふ   さいばら天気  第75号

蟹喰いし仲間暇かな飼育二課  井口吾郎  ウラハイ

口止めをして長江を泳ぎきる  西村 薫  ウラハイ

枯山が枯山を立ち塞ぐかな   すずきみのる  第79号

束ねてはせせらぎほどの芹薺   小池康生  第79号

幕間の時雨となりし鳥羽伏見   村上瑪論  第38号

猛禽の声の中なる氷柱かな   対中いずみ  第39号

枯菊に残つてゐたる火の匂ひ   茅根知子  第40号

春の星ふえて谷地坊主のふえて   陽美保子  第49号

蟻止まり有象無象を見上げたる   中田剛  第64号

草原の枯れて激しく晴るる空   寺澤一雄  第82号

風とまる岸田今日子のかたちして   村田篠  ウラハイ

庭に出て爪切る人やアマリリス   玉簾  第55号

向日葵の二本をゴールポストとす   白濱一羊  第64号

冬あたたか蛇の脱殻入れし瓶   谷さやん  第84号

ワイパーのぎしぎし鷲の降りてきし   大石雄鬼  第84号

40代

滑空の鳩黄落のはじまりぬ   長嶺千晶  第81号

昭和の日地下へひろがる喫茶店   中嶋憲武  第55号

新聞に切抜きの穴うぐひす鳴く   上田信治  第40号

しわしわの鯨の耳骨冬木立   照井翠  第87号

雲を吹くごとし七草粥吹くは   太田うさぎ  第85号

壜底にブラシとどかぬ十二月   堺谷真人  第87号

傘開くところより春暮れにけり   近恵  第55号

椅子持って紋白蝶についてゆく   小倉喜郎  第49号

朧夜を卵をなぞるごと歩む   守谷茂泰  第52号

ががんぼの吹かれて自由とは違ふ   齋藤朝比古  第60号

いちまいの布となりたる南風   北川あい沙  第66号

旅はゆりかご人は雫になる途中   月野ぽぽな  第87号

むささびやノート開きしまま眠る   青山茂根  第38号

万緑や鳥に生まれて鳥を追ひ   杉山久子  第55号

遠足の二百人はなれて三人   星力馬  第55号

昼の虫電池すとんと収りぬ   岡田由季  第87号

花吹雪ポップアートのポップとは   山根真矢  第49号

森の絵に色なき風を加へけり   山田露結  第70号

蜃気楼失敗作のごとく立つ   佐藤郁良  第53号

美しき島(フオルモサ)は露原隠れさまよふ島   高山れおな  第76号

夏服の医大方面明るい夜景   小野裕三  第80号

標本の虫喰ふ虫や冬ぬくき   榮猿丸  第86号

30代

鏡には映り阿部完市話す   関悦史  第71号

ひなたなら鹿の形があてはまる   鴇田智哉  第87号

六月の空より拾ふ活字かな   中村安伸  第87号

豚の不敗神話の中のさくらかな   二輪通  第52号

晩婚に冬のいなづま刺さりけり   岡村知昭  第39号

砂粒の光り出したる水着かな   榊倫代  第62号

山霞む耳に耳たぶあるやうに   青島玄武  第79号

滝壺は何で溢れないのかな   北大路翼  第57号

金胡麻を炒るひとときや蝉の夕   津久井健之  第69号

20代

いくつもの斧をねむらせ雪の山   冨田拓也  第83号

鷹鳩と化すや嫌はれてもいいや   矢口晃  第42号

ずんべらずんべらと冬の川に板   澤田和弥  第79号

不健全図書を世に出しあたたかし   松本てふこ  第52号

風船を膨らませたる手の匂い   神野紗希  第43号

みなみかぜ駐車場まで早歩き   中原寛也  第69号

日雷魔法瓶ン中氷だけ   西川火尖  第68号

我が腿のあたりまで跳ぶ蛙かな   江渡華子  第86号

ひた並ぶ昼の街灯あげはてふ   佐藤文香  第60号

水音のひしめいてゐる夏休   山口優夢  第68号

寒肥のうすももいろの袋かな   谷雄介  第79号

冬帽の大きすぎたる記憶かな   宮嶋梓帆  第42号

泡立たぬ歯磨き粉あり帰省する   小林鮎美  第70号

サンドイッチマンかつサンタ歩み来る   生駒大祐  第86号

10代

林檎にへた地球に地軸かつ引力   越智友亮  第76号

海鳴や秋思にはるかなる余白   福田若之  第77号

豊年や鳥のはばたく切手貼る   加藤光彦  第77号

葡萄剪るゆらめく重みありにけり   三村凌霄  第77号

秋の暮カレーに膜の張りにけり   小野あらら  第77号

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