すとん 岡田由季
鬼子母神裏のハイビスカス細る
冷房の部屋乾杯を待つてをり
センサーの目に見えぬ線月見草
極上の軌道をたどり竹落葉
ドライバーふたり一組朝曇
深追ひをして青梅に囲まるる
くわりんたうすこし塩味青田風
夏の果天井桟敷の人動く
廃番の口紅塗りし月の夜
がやがやと並んでゐたる曼珠沙華
穴掘れば穴へ秋の蚊集まりぬ
菊日和土間にしまひしオートバイ
秋水のくるぶしほどの深さかな
蓑虫の闇のどこかがほつれをり
昼の虫電池すとんと収りぬ
呼ばるるまで立冬の雲見てゐたり
七五三のこどもが傾きつぱなし
指輪から老いのはじまる冬ぬくし
液晶に欠けひとつあり霜の夜
夫婦で来て妻ばかり話す水鳥
履物を狐に盗られあさきゆめ
フェリーから下りてしばらく冬の虹
大人のみ部屋に残りし三日かな
春宵のピアノに片手置きし歌手
巨大パフェ運ばれてくる春眠し
春の月壁一面が書架の部屋
パレードをやり過ごしたる花の冷
車座のひとりが唄ひ霾れり
次の蝶来ておなじ道たどりけり
水槽をからつぽにして春行きぬ
●
2008-12-21
岡田由季 すとん30句テキスト
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 comments:
コメントを投稿