遠き男 堺谷真人
手品師の消えて始まる落花かな
よく変はる手相のうへの桜貝
牛蛙どちらの言ひ分から聴かう
大小の分銅光る楠若葉
カフェラテに浮かぶ暗号青葉雨
いつ見てもテナント募集花みづき
若竹のやうな正論吐いてみよ
衣更して二の腕の二本づつ
花栗の空濡れにけり道路地図
大仏のそびら見上ぐる薄暑かな
くらがりの鍛錬装置梅雨に入る
ところてんあなたが誰か分からない
狂王に似て大ぶりの夏薊
中年や籐椅子の底ぬけてゐて
解任まぢか夜啼きするほととぎす
朝の蛾の這ふ堕天使の這ふごとく
祭神を数へそこなふ蛇の衣
人わけて人みつけたる花火かな
師の一句涼しく書かれゐたりけり
浮草にまみれて乾き鉄兜
左舷より大挙侵入する水母
夏草を撃ち夏草に斃れけり
初秋の白木の箱の軽さかな
逃げ惑ふ僧を打ちすゑ九月尽
夜長とは君去りて椅子残ること
曼珠沙華手の鳴る方へおびきだす
壜底にブラシとどかぬ十二月
冬かもめ沖の一羽は沖を見て
不可解な螺子落ちてくる日向ぼこ
冬虹や遠き男に矢を放つ
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2008-12-21
堺谷真人 遠き男30句テキスト
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