2008-12-21

クリスマスは俳句でキメる! 近 恵

クリスマスは俳句でキメる! ……近 恵


女優の長谷川京子と2人組バンド・ポルノグラフィティのギタリスト新藤晴一が、黛まどか主催の句会で知り合い、結婚に至った。ワイドショーで句会の存在が取り上げられるとは、これで俳句も一気にメジャー化!?

そこで、巷に並んでいる女性誌や男性向け情報誌のような企画が俳句雑誌にあったら…と考えたのが事の発端。クリスマスを俳句でキメるとしたら、どんな俳句がいいんだろう。

そもそも俳句は希望や意志を伝えるには不向き。というよりも、そんな目的がある時点で俳句である必要性が全く無い。

しかも、クリスマスである。聖夜にキメるんである。当然流れは俗なほうへ俗なほうへと流れるわけで。

となると、季語自体が本意から外れた俗な感覚で捉えられ、厳かな感じなど微塵もなく、欲望の渦巻く坩堝へと…本当にクリスマスに俳句でキメることなんてできるのか!?

せっかくだから、ここは俳句としてのポテンシャルやクオリティを保ちつつ、かつ解りやすいもので勝手に考察(ほぼ妄想)してみたい。

なお、あらかじめお断りをしておくと、生物学的・遺伝子学的にオスはメスに選ばれるものであり、決定権はほぼメスにあるといっても過言ではない。ヒトもまたしかり。オンナからキメにかかかれば成功率が高いのは当たり前。ということで、基本的にオトコの側からの“キメ俳”ということで考察。


1.まずはクリスマスのスケジュールを押さえることが肝要

  へろへろとワンタンすするクリスマス   秋元不死男

12月22日 銀座のイルミネーションの中で信号待ち中
男「クリスマス、なんか予定あるの?」
女「別に~。そっちは?」
男「へろへろとワンタンすするクリスマス」
女「えっ?ふふふっ、なんだか寂しいね」
男「なら、ワンタンじゃなくて豪華に北京ダックでも食べにいかない?予約するよ」
女「ホント?!」

12月22日 中野駅北口で信号待ち中
男「クリスマス、なんか予定あるの?」
女「別に~。そっちは?」
男「へろへろとワンタンすするクリスマス」
女「あははっ、なにそれ~」
男「行きつけの中華料理屋があるんだけど、そこのワンタン美味いんだ。クリスマス一緒にどう?」
女「え?あ、あたし友達と約束あるから」

自分本位なこだわりはこの際捨てましょう。気転を利かせるのも大切。

 ●
  この出逢ひこそクリスマスプレゼント   稲畑汀子

12月22日 銀座のイルミネーションの中で信号待ち中 
男「ちょっと早いけど、コレ、君に」(とかいってTIFFANYのブルーの小箱なんかを出す)
女「えっ?…いいの?ありがと~!…あ、でもあたしお返しが。。。」
男「もうもらったよ」
女「え?」
男「この出逢ひこそクリスマスプレゼント」
女「…そんなあ」
男「なら、プレゼントはクリスマスケーキがいいな。イブに一緒に食べようよ」
女「…わかった!じゃあおいしいの用意するね」

12月22日 中野駅北口で信号待ち中
男「ちょっと早いけど、コレ、君に」(とかいって角川の俳句歳時記 新年なんかを出す)
女「えっ?ありがとう。。。。。。なんかお返しを。。。」
男「もうもらったよ」
女「え?」
男「この出逢ひこそクリスマスプレゼント」
女「…500円相当なんだ。。。」
男「でもずっと使えるよ」
女「じゃあルノアールで珈琲でもご馳走するよ。行こう、近くにあるから」

季語だけでなくプレゼントの斡旋も大切。


2.とりあえずクリスマスイブの約束は取り付けたとして

  沖へ出てゆく船の灯も聖夜の灯   遠藤若狭男

12月24日 汐留あたりのホテル上階のレストランなどで
男「夜景が綺麗だね」
女「ホント、キレイね。あっちはお台場? あ、船!」
男「沖へ出てゆく船の灯も聖夜の灯」
女「…ロマンチックなこと言うのね」
男「この夜景、一晩中一緒に見ようか。部屋を取ってあるんだ」
女「…そうね。そうしようかな」

12月24日 品川あたりの船着場
男「夜景が綺麗だね」
女「ホント、キレイね。あっちはお台場?あ、船!」
男「沖へ出てゆく船の灯も聖夜の灯」
女「…ロマンチックなこと言うのね」
男「一緒に船に乗ろうか。チケット取ってあるんだ」
女「…あ、ごめん。私船酔いするから」

季語だけでなく場所の斡旋も大切。

 ●

  聖夜わが領土は半円のケーキ   中村安伸

12月24日 どこぞでワンホールのケーキを前に
男「じゃあケーキ切るよ」
女「半分こなんて豪勢だね~」
男「聖夜わが領土は半円のケーキ(デコレーションの多いほうを渡して)」
女「ありがとう!やさしいんだね」

12月24日 どこぞでワンホールのケーキを前に
男「じゃあケーキ切るよ」
女「半分こなんて豪勢だね~」
男「聖夜わが領土は半円のケーキ(デコレーションの少ないほうを渡して)」
女「…セコいんだね」

思わず食い意地を張らないことも大切。


結論:俳句でキメるというよりも、むしろ俳句以外の要素の方が重要かと思われる。どんなトホホ俳句でも、ロマンチックな俳句でも、タイミングやTPO、事前のリサーチの次第によって、キマったり玉砕したりする可能性が。相手の反応から気持ちを察する観察力や、あらかじめ描いていたシナリオを臨機応変に変えてゆく気転の良さも要求される。すなわち、俳句でキメるのは結構高度なテクニックを要する。


3.友達以上恋人未満にこんな俳句を捧げられたら

※これ以降は刺激的な表現を含むため白字にいたしまた。読む覚悟のある方は、マウスでドラッグしてお読みください(業界初・袋綴じ)  
 我が心きりたんぽより灼熱   上野葉月

俳人が相手でない場合、「きりたんぽ」はかなり意味不明。けっこう怪しげです。その前に相手をその気にさせておかないと、間違いなく引かれるでしょう。
  路地裏に聖樹の星拾ひに行かん   近恵
そう言って強引に路地裏へ連れ込んでしまうという手もあります。あらかじめ目的地として最適な路地裏かどうかを確認しておきましょう。
  冬帽のまま押し倒す最上階   内藤独楽
ホテルの最上階の部屋なら連れ込んだ時点でほぼ成功といえますが、明確な合意がなかった場合、あとで犯罪者呼ばわりされる覚悟も必要です。
  河豚おごるどういふことかわかるよね   北大路翼
わかります。ただし相手にその気がなければ「わかんな~い。ごちそう様!!」とすっとぼけられてしまう可能性も…。
  クリスマス正しき精子増殖す   谷雄介
ええっ? いきなり子作り宣言!? 思いっきり引かれそうです。
  剥ぎとりしサンタの鬚を拾ふなり   生駒大祐
そこまで漕ぎ付けておきながら、鬚なんか拾っている場合じゃないでしょう!
  初氷踏むや失恋記念の日   岡本飛び地
いや、もう勝手に失恋されても…ドン引きです。
最後に、ある意味ものすごーくキメられている俳句をご紹介。これで逃げたら鬼畜です。
  雪らしい生理が遅れてゐるらしい   北大路翼
なお、相手が俳人の場合、会話が俳句談に流れてしまってはムードもへったくれもないのでご注意を。 相手が俳人でなければ、わかりやすいベタな台詞を五七五で言うのがベストかも…。テクニックを駆使した俳句は理解するのが困難。キメる以前の問題に。
もし実践してみた方がいらっしゃいましたら、是非その結果も伺いたいところです。

皆様、よいクリスマスをお過ごしください。

6 コメント:

匿名 さんのコメント...

すごーく愉しかったです。
こんな使い方できるんだー!!
妄想はさすがです。
うらとじ開けるの、初めてで面白かった。


じあん

葉月 さんのコメント...

>「…500円相当なんだ。。。」

最近は文庫でも500円じゃ買えないぞっ、と一瞬思いましたが、よく見てみると確かに500円相当。
すごいぞ偉いぞ角川文庫!(何を言いたいんだか)

猫髭 さんのコメント...

(業界初・袋綴じ)
面白かった。とてもエスプリが効いている。
昔シュールレアリストの滝口修造が出した詩集『地球創造説』(書肆山田)を思い出しました。真っ黒な本にブラックインクで書いてある。
また、幼き日のあぶり出しを懐かしく思い出しました。

爺いもクリスマス・イブに若い子を俳句で誘ってみよう。

  ベッドではウルトラマンになる聖夜 猫髭

自壊註)ウルトラマン:三分勃つと萎みますww

薫 さんのコメント...

俳人って、とびきり上手にも、ヘタクソにも詠んで平気でいることができる文芸だと
つくづく思いました
愛すべきは「俳人」ですね

ところで「ベッド」と書く人は65歳以下
「ベット」と書く人は65歳以上です
わたしの統計ですが・・・

猫髭さんを見習って

わたくしが上にもなつて聖誕祭   薫

恵 さんのコメント...

皆様、様々なコメントありがとうございます。
また、リンクを張ってくださった石原様、ありがとうございます。
生き恥を晒して投稿した甲斐がありました。

クリスマスはこれから。
俳句でキメる人達がが巷にあふれることを願ってやみません(笑)

猫髭 さんのコメント...

やってみました。俳句を全く知らない美女ふたりに。結果は「1.まずはクリスマスのスケジュールを押さえることが肝要」編で挫折。二兎を追う者一兎も得ずかと思ったが、つらつら考えてみるに、俳句でハクイねえちゃんを誘うという事自体が、限りなくダサイのではないかと・・・。

で、懲りずに、今度は俳句を嗜む熟女にやってみました。二兎とも中りました。どうしよう、ダブルブッキングww。

使用済サック(あ、漢字で書かないと卑猥、作句)は以下の二句。

 或る日が或る日この夜になる聖夜
 千一夜千くりかへす聖夜かな

待ち合わせ場所は大久保俳句文学館というところが渋い。