2009-02-01

週俳新年詠を読む【1点句】

【1点句】

8 内湯から露天へと出る淑気かな
内湯から露天風呂へ、ぶわっと出るもの、それは湯気ですね。けれどお正月、湯気とともにおめでたい気持ちもぶわっと溢れ出ているのでしょう。正月そうそう露天風呂へ、というのも気持ちよいし、作者が羨ましいですね。(佐緒理)

14 二日はや漏斗に吸はれ行く醤油
 漏斗に注がれる醤油という景が好きになった。またそれが滞りなく円の中へ円をたどるように落ちるさまが「吸はれ」でぱっと浮かんだ。二日。綿のかっぽう着や慌ただしい台所、大きな鍋。田舎の正月だけだろうか。(美加里)

18 あげたき子あげたくなき子お年玉
お年玉をあげたい子、あげたくない子、しかし親の手前、どの子にも平等にあげざるを得ない葛藤というものがあるのでしょうか。あげたくなき子がどんな子なのか、必要以上に想像してしまいました。(美加里)

20 ぽつぺんのぽこんと母の記憶欠け
 女性だろうか、ぽつぺんは母のものだろうか。ぽつぺんを吹くことはアンニュイで、ともすると少女趣味だ。記憶が「ぽこん」と並んでいると妙におかしい。(美加里)

22 石鹸に牛の絵のある初湯かな
お正月、親戚が集まるから家の風呂では手狭、そこで銭湯へ行く。体を洗おうとしたら、石鹸に牛の絵が。もしかしたらずっと牛の絵の石鹸かもしれないと思いながらも、ふと干支が頭に浮かぶ。丑年だったら何だかうれしい。丑年じゃなくてもおもしろい。(佐緒理)

31 伸びゆける夕映えに年新たなり
 新年を夕日に街に見る。見回せばどこも晴れの日の装いで、一刻一刻また陽に呑まれていく。ゆっくりと何かになじむ感覚のような気もする。(美加里)

37 初売の雑踏に身を流しこむ
 「身を流し込む」という表現がしっくりきた。意志を持って初売りに来たのに、思うままに動けない作者の様子が滑稽。(大紫)

45 カワセミは青い点なり初写真
翡翠といえば夏だけれど、ここではカタカナで書かれているし、初写真なので、外国旅行で写真を撮ったのかもしれない。おそらく写真が好きな人なんだろう。今年初めての写真が、外国で、しかも空飛ぶ宝石と呼ばれる鳥を収めたものだなんて、ちょっと素敵。(佐緒理)

52 殺戮のにほひや鏡割る祖父に
 祖父の力強さが感じられる作品。鏡割りが祖父に生をもたらしたようだ。(大紫)

53 日の丸って四面楚歌なの初御空
 日の丸と四面楚歌の組み合わせは、思いつきもしなかった。日本は海に囲まれた島国だが、日の丸はそんな日本をありのままに表現した標なのか。(大紫)

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