主宰代表近詠集(2009.9)
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石田郷子「椋」
能村研三「沖」
高橋将夫「槐」
山尾玉藻「火星」
神蔵 器「風土」
鷹羽狩行「狩」
伊藤通明「白桃」
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夕べより青水無月の眼かな 石田郷子(「椋」2009.9)
夏も夕方になれば、暑さが少し和らぎ、青葉にも闇が迫って、艶めいてくる。「青水無月の眼」と省略の効いた表現で、その時刻の気配が存分に伝わってくる。
美しき殺生の火の蚊遣りかな 高橋将夫(「槐」2009.9)
言われてみれば、蚊遣りの火はたしかに殺生の火なのだ。それを思うと、遠いものと感じていた小さなぽつんとした火が、なにやら妙に自分に近いものに思える。「美しい」というのは、そういう心持ちから湧いてくる感情のことなのではないか、と思う。
盆過ぎの声や巌のうしろより 山尾玉藻(「火星」2009.9)
「盆過ぎの声」が不思議だ。どんな声なのか。盂蘭盆の終わった、少しぽかんとした気分のときだから、耳はいろいろな声をキャッチしそうな気がする。空耳のようで、そうではないようで。知っているようで、知らないようで。
遠山に雨の来てゐる夏料理 伊藤通明(「白桃」2009.9)
夕立にけぶっている遠くの山を眺めながら、お料理をいただく。目に映る景色の涼しさは、舌で味わう料理の涼しさへと転化し、風景と料理は、分かちがたくひとつの「時間」として賞味される。
(村田 篠)
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2009-09-27
主宰代表近詠集 2009.9
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