林田紀音夫全句集拾読 100
野口 裕
一歩が辛く雨横走る煉瓦壁
昭和三十七年、未発表句。どの発表句と関連するかは不明。風雨激しい日の体験から出てきた句。煉瓦壁は対岸だろうか。辛い一歩を支えてくれそうな風情ではない。
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頸の真珠に煤じんの一粒加わる
昭和三十七年、未発表句。昭和三十七年、「風」発表に同一句。
階段に縦の灯その下層へ帰る
昭和三十七年、未発表句。年譜を見ると、昭和三十四年から吹田市千里の公団住宅住まいとなっている。団地が目新しい頃である。発表句との関連を見て行くと、「雛の段に背き暗夜の階重なる」(昭和三七年、「風」)になるかと思う。団地に住むということに複雑な思いがあったと想像されるが、句として結晶されることはなかったようだ。
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珈琲の沼運ばれて夜が加わる
昭和三十七年、未発表句。「珈琲の沼」が興味ある言い方。日常生活での、ちょっとした感慨をすくい上げる技術を紀音夫は持っているが、未発表としているところを見ると、それを良しとはしなかったようだ。
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後頭疼く虹を感じてよろめけば
昭和三十七年、未発表句。紀音夫には虹よりも星の句が多い。その意味で珍しい。少し嘘臭いところが気に入らず、お蔵入りになったか。
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2010-01-17
林田紀音夫全句集拾読 100 野口裕
Posted by wh at 0:05
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