第1回「週俳・投句ボード」2009年2月/3月の俳句から
中西夕紀・撰
○花鳥や石橋楽器梅田店 猫髭
梅田ですから繁華街なのでしょうけれど、花鳥との取り合わせで雅趣が出た句だと思います。固有名詞の石橋が句を引き締め
ているのでしょう。
○春の田にひねもすのたりのたり土 minoru
蕪村の春の海を思い浮かべる句です。言葉で遊びたい作者なのでしょう。春の田の土を目出度くうたいあげています。
○蛇穴を出でて左が青梅線 沖らくだ
郊外の春の景色ですね。線路が並んでいて、左が青梅線だというのですが、行先の青梅を連想させますし、たぶんそこも、畑なんかが少しは残ったところなのではないでしょうか。
○春ショール千秋楽のロビーかな 栗山心
華やかな情景を思い浮かべます。千秋楽ですからファンが詰め掛けたことでしょう。劇場はどこも女性客が圧倒的です。
○春蘭のむかし袂へ石を入れ 藤本る衣
川に身投げしようと思ったことをいわれているのですが、春蘭で俄然面白くなったようです。「むかし」というのは、私の過去とも過去の人とも思えますが、身の上話と受け取りますとしんみりとしていいですね。
○潮臭くなるまで春田打ちにけり 中村遥
夕方になりますと、確かに潮の匂いが遠くまでするようです。春の感じが濃厚にします。「潮臭くなるまで」と区切りをつけているところに、農作業になれていらっしゃる方なのだろうと思いました。
○店番と春のめだかとその影と 藤本る衣
店番の淡い存在感を言いとめた句です。めだかに焦点を当てながら、店番を見せているあたりが面白いと思いました。
○店なりし頃のままなる日永かな 三島ゆかり
店を畳んでしまった傷心がみえる句です。或は馴染みの店が閉めてしまった感慨かも知れませんね。
○白梅の散りこんでゐる控室 金子 敦
控え室とありますから何か催し物の役員が集っているのでしょう。戸が開いていて梅の落花が舞い込んできたというのです。初午の神社か、梅祭りの公園などを連想しました。情景がはっきり見えてきます。
○白梅の襲色目のチマチョゴリ 栗山心
美しい色合いの句ですね。古式ゆかしい感じが出ています。
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