2010-08-15

俳句甲子園レポート2010 準決勝編 江渡華子

俳句甲子園レポート2010
準決勝編

江渡華子


一時の夕立に見舞われつつも、今年の俳句甲子園も晴天続きだった。

俳句甲子園二日目。準決勝と敗者復活戦は、松山コミュニティセンターで行われる。

前日の予選リーグの結果、準決勝に進んだのは開成高校Aチームと開成高校Bチーム、石川県立金沢泉丘高校の3チームだった。3チームの中に一つの高校が2チーム含まれていることから、開成同士の対戦が行われるかどうかが、前日からの話題となっていた。

くじびきの結果、開成高校BチームがA、開成高校AチームがB、金沢泉丘高校がCを引きあて、開成高校の2チームが準決勝で対戦することとなった。Cを引いた金沢泉丘高校の対戦相手は、この日行われた敗者復活戦にて勝ちあがる高校となる。

敗者復活戦は、沖縄県立首里高校が以下の句で勝ち上がった。

   まるごとの檸檬に闘志の歯形なり

よって、金沢泉丘高校と対戦するのは、首里高校となった。

準決勝一回戦は、開成Bチーム対開成Aチームの対戦から始まった。

【先鋒戦】
開成B 黒百合や腰掛けて岩みづみづし
開成A 黒飴の傷舐めてをる夜長かな

結果はAチームの勝利。作品点にさほど点差はなく、ディベートで点差がついていた。Bチームは全員一年生で構成されており、Aチームの場数の違いが強さを見せた。

【次鋒戦】
開成B 子規の忌の雨に黒ずむ新聞紙
開成A 先生の黒子の多き夏期講座

結果はAチームの勝利。しかしながら、ここでも作品点での差はほとんどなく、ディベートでの差となった。Aチームは、自分のチームの句については夏期講座の必然性を説明し、また、Bチームの句については新聞「日本」を発行した正岡子規の忌日に対して新聞紙を取り合わせるのはありきたりだ、と攻めた。

【中堅戦】
開成B 秋高し象まつ黒に洗ひ上ぐ
開成A 蜩や切符の端の黒ずめる

結果はBチームの勝利。作品点も鑑賞点もBチームが上回った。中原道夫審査員からは、大きな景をそのまま爽やかに詠むBチームと景色の中の一点に集中する俳句であるAチームは俳句が対照的であるという指摘がなされていた。元気いっぱいに主張するBチームに対してとAチームはそれをなだめるように、しかし的確に攻めていた。

【副将戦】
開成B 水よりも黒き影もつ踊りかな
開成A 草市の跡のか黒く湿りをり

結果はAチームの勝利。よって、開成高校同士による準決勝はAチームが先輩の面子を保てた形となる。

影がどのようなものだったのかをもっと具体的に詠んだ方がいいというAチームによる指摘は、確かに納得させられた。Aチームが俳句を詠むときにどのような点に気をつけて詠んでいるのかよく見えた気がする。AチームはAチームのようなチームに攻められた時に、一番の強さを発揮する句を詠んでいる気がした。

準決勝二試合目

【先鋒戦】
金沢泉丘 野外劇黒衣駆け出す秋暑かな
首里   炎天や舌に転がす黒砂糖

結果は金沢泉丘高校の勝利。首里高校の暑さと黒砂糖の取り合わせは、直前に行われた開成高校の「黒飴の傷」の句を連想させるものの、黒飴の句ほどには焦点が絞られてはいない。それに対して金沢泉丘高校の句は、野外劇の中でも特に黒衣という目だたない物に注目したことは、俳句の本質に適っている、と高柳克弘審査員から評価されていた。

【次鋒戦】
金沢泉丘 先輩の黒き睫毛や流れ星
首里   返信なき艶書メールや黒南風

結果は首里高校の勝利。両方恋のメールで評価は五分五分であったが、ディベートで首里高校が勝利していた。「黒南風」という季語の取り合わせ方にばかり議論が集中しがちなディベートに対しては、本来、「黒南風」は「くろはえ」と読むものであるのに「くろみなみ」と読ませていることの是非など、もっと指摘できる箇所はあったのではないか、と夏井いつき審査員からのコメントがあった。

【中堅戦】
金沢泉丘 夏期講座栞はさめる赤と黒
首里   漆黒の碗や銀河めく茶の点てり

結果は首里高校の勝利。ディベート点のほとんどが首里高校に入っていた。作品点もやや首里高校の方が上回っていた。「茶の点てり」という文法を指摘するのは野暮だろうか。しかし、その文法に対する意識の甘さにより、曖昧になった景を金沢泉丘はもっと攻めることはできたはずだ。首里との間でディベートの点差がついてしまったのはそこの部分だったろうと思う。

【副将戦】
金沢泉丘 黒板の英訳真っ赤汗臭ふ
首里   炎日や五線はみだす黒音符

結果は金沢泉丘の勝利。首里高校は黒音符という造語の魅力を存分に言い表せていなかったのが敗因かと思われる。
よって、2対2で大将戦にもつれこんだ。

【大将戦】
金沢泉丘 黒飴を口に転がし敗戦日
首里   蚊火ひとつ黒洞洞たる島の夜

結果は1対12で首里高校の勝利。

開成の「黒飴の傷」の句、首里の「舌に転がす黒砂糖」の句に続いて出てきた今回の金沢泉丘の句に、「あぁ」という声が会場からあがった。大将戦までもつれこんだ対戦は、句が読みあげられた時点で、金沢泉丘にはどうしても不利な展開になるであろうことが予測された。

黒田杏子審査委員長が、首里高校の句に創作点満点である10点をいれ、絶賛された。沖縄の島の魅力を大きな視点で捉えられているとのことだった。

よって、決勝戦は開成高校Aチーム対沖縄県立首里高校となった。

個人的には、高柳克弘審査員が、金沢泉丘高校と首里高校の大将戦の際、唯一金沢泉丘高校に旗をあげられた理由を聞きたかったが、司会者が別の審査員に感想を求めたためそれは叶わず、準決勝の幕が閉じた。

首里高校の勢いには、昨年度の優勝校である松山中央高校を彷彿とさせ、昨年度松山中央に敗北した開成高校がどのような試合を見せるか、決勝がより楽しみになった。

(来週に続く)

参照→第13回俳句甲子園準決勝・敗者復活詳細

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