【週俳10月の俳句を読む】
陽 美保子
季語の効用
売り物の机に秋の日差しかな 清水哲男
この机、新品ではない。道具屋の店先に並べてあるもの。他のだるまストーブや椅子と一緒にちょっと道にはみ出して置いてある。店主はこれを早く売りたいのかもしれない。何の変哲もない机だが、まあ、作りはがっちりしていて悪くはない。しかし、わざわざ中古で買うほどのメリットもない。たぶん、しばらく売れないで、こうして置かれているのだろう。…と読者に想像させるのも「秋の日差し」の効用。
アイロンの鼻先進む枯野かな 石井浩美
アイロンかけというのは、時間に余裕があり、ある程度満ち足りている主婦の特権であるかのような気がして、ほとんどアイロンをかけることのない私はちょっと気遅れする。家の中は心地よく片付いており、差し迫ってしなければならない用事もない。夫も子供も外出中。外は枯野だが、その枯野にたっぷりと日が当たり、あたたかそうな明るい日差しが、静かで平和な部屋の中まで差し込んでいる。アイロンを進めていくと、その日差しを受けて時々アイロンがきらりと光る。
屍のポーズにて聴く秋の雷 杉山久子
屍のポーズはヨガの最後に必ず行うポーズ。ポーズというほどでもない。ただ脱力して仰向けに寝るだけ。これでそれまで行ったヨガの効果が上がるというのだからありがたい。誰もが一番好きなポーズだ。下手すると寝てしまうが、上手くいくと、心身の疲れがとれて五感が冴える。そんなときは自分の肉体を忘れることができる。純粋に感覚だけになることができる。雷が鳴ると、それを聞いているという自分を介さずに、雷が聞こえる気がする。秋の空ならなおさら。
■村田 篠 棘 メキシコ雑詠 10句 ≫読む
■村越 敦 ムーミンは 北欧雑詠 10句 ≫読む
■清水哲男 引 退 10句 ≫読む
■石井浩美 ポスター 10句 ≫読む
■くんじろう ちょいとそこまで 10句 ≫読む
■杉山久子 露の玉 10句 ≫読む
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2010-11-07
【週俳10月の俳句を読む】陽美保子 季語の効用
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