2010-11-28

商店街放浪記41 大阪 中崎 小池康生

商店街放浪記41
大阪 中崎町 前篇

小池康生


<クリスマスケーキを24等分したような形の町に行きます>。

路地裏荒縄会、十一月の当番赤レンガさんが、そんなメールをよこしたのだ。

クリスマスケーキを24等分した・・・・小さな町ということだろうか。味のある街ってことか。

地下鉄天神橋六丁目南改札で待ち合わせ。
前回の天満市場の近くである。

木曜の夜の七時、仕事を持つ大人たちが駆けつける。
ペーパーさんからは遅刻の報せ。
赤レンガ、筆ぺん、九条DX、赤ぺんの4人旅となった。
さぁ、赤レンガさん、どこに連れていってくれますか?

地上に出ると、赤レンガさん、
「南ってどっち?」
あんたが案内役でっせ。南はあちら。

すぐに、<天五中崎商店街 おいでやす通り>の入り口。
日本一長い商店街<天神橋筋商店街>の天五と天六の間あたりを西に延びる商店街だ。アーケードもある。


アーケードに入りすぐところに有名なたこ焼き屋「うまいや」。
すでに閉店時間を過ぎているが、頭上の看板が実に年季が入り素晴らしい。
常に、大阪のたこ焼き店ベスト10に数えられるところ。
大きな声で言えないが、わたしの率直な感想は、
「なんでこれが・・・」
である。店の人はエラそうだし、そないにたいした味とも思えぬし・・・。
まぁ、味音痴のあたしのたわごとだから、どなたも気になさいませぬように。

たこ焼き屋のすぐ西側に、ほどよく寂れた酒屋を発見。
立ち吞みをやっているのだ。
「いい感じ」
と言いつつ、そこを通り過ぎ、
「あんなところで一杯やりたいね」
と誰かが呟くと、全員の足が止まり、踵を返す。
皆、呑みたかったのだ。

赤レンガさんを先頭にのれんをくぐる。
・・・どういう先客がいるのだろう。
『面倒くさい客はおらんやろな』
そういうテロップとなり、わたしの脳裏に流れる。
こういうところはうっとうしいおっさんも多い。
楽しさと面倒臭ささが、紙一重である。

果たして・・・おじさんとおばさんのカップルがひと組。いい気分で飲んでいらっしゃる。店内の空気は、ほどよく枯れて、そこかしこが黒ずみ年季を感じさせて大変よろしい。

ビールも飲みたい。燗酒も欲しい。
「集合して5分とたたない内に酒。最短です」
と筆ペンさん、

日本酒をどうするか、店主に相談すると、
「今、うちがお薦めしてんのは、これ」
一升瓶がつきだされる。<宮水の華>だ。
それを常温で二杯たのみ、4人で分ける。

「この酒を作った会社は、宮水の発見者」
それを受けて筆ぺんさんが、
「桜正宗ですね」
ひとしきり、今度は筆ぺんさんが、この会社の説明をする。
店主が驚いている。
「酒造会社の方ですか?」
違う。物識りなだけ。
「お兄さん、顔つきが上品ですね。宮家の人みたいなや。いい耳してるわ。かぶりつきたいような耳や」
この店主、どこまでが冗談なのだ。確かに、筆ペンさんは上品な顔立ちだが。

屋号、<堀内酒店>。
「創業一一〇年を越えています。わたしで4代目です」
このあたりが西成群だったと歴史解説が始まる。市内は大きく西成群と東成群に分かれ、<成庭>が<なにわ>の語源だとご高説を賜る。鋭い目つき、愛想のいいトーク。けったいな店主だ。

小売をやめ、立ち吞みの店にして、ファンクラブもあるそうな。
一方で入りにくい店先にしてるとか。
そうやって、全国の酒屋50万店で生きのびている25万店のひとつになっているという。

いい気分になって、再び歩きだす。

商店街をすこし逸れたところに<高山文庫>。
商店街の中に戻り、進むと・・・<青空書房>
高山文庫で天神橋筋商店街と中崎街界隈の古本屋の地図をもらった。
界隈に29店舗の古本があるのだ。

『大阪は捨てたもんやないなぁ』
と思う。
大阪はコテコテではない。地道に古本屋が経営され、それを愛する人たちがいる。店側にも、客側にも渋く渋く生きてる人がたくさんいるのだと思う。
吉本の芸人の前へ前へと進む芸風もおもしろいが、それ以前に引いて引いてちょこっと自分を表現する大阪人がたくさんいるのだ。
そういう大阪を知ってほしいと思っている大阪人のどれほど多いことか。
路地裏荒縄会も、そういう大阪再発見を試みているのだ。

商店街を進む。おもしろそうな飲食が多い。
そう言えばさきほどの<堀内酒店>の店主が言っていた。
「物販の店が減り、飲食店ばっかり、シャッター通りですよ」
シャッター通りには見えないが、全盛期を知る人にはそうなのであろう。

大阪の沖縄料理の走り、<梯ご屋>。青空書房とともに、この商店街を象徴する店だ。

まだ十五分と歩いてないのに、いくらでも話ができる。
市内の中心地、梅田から少し外れたところに、こういう町があるのだ。

ケーキを24等分した街は、まだまだ先。
一杯ひっかけ、皆饒舌になる。
商店街がよけいに長く長くなっていく。


  くらがりに歳月を負ふ冬帽子   石原八束 

                 

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