10句作品テキスト 嵯峨根鈴子 死角

死角　嵯峨根鈴子

鳥渡るひとかたまりに靴脱いで
入らぬと決めたる墓を洗ひけり
きしきしと秋日のなかの牛のかほ
縦の物たてにしたるも秋の昼
修羅場と化すもつてのほかの菊膾
教科書の死角に小鳥来てをりぬ
おほまかに父は描かれ九月果つ
十字いま切りたる手首水蜜桃
吐魯番のやつぱりいびつな月がある
ひよこ売る銀河のはづれといふところ

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