2011-09-11

〔超新撰21を読む〕青山茂根の一句 野口裕

〔超新撰21を読む〕
窯変のきらめき
青山茂根の一句……野口 裕


うろくづといふ雑炊の小さき色  青山茂根

感覚の冴えが句に定着するときに、定型の生理そのままに定着するときと、作者の意識あるいは無意識によってわずかな窯変を起こす場合とがある。青山茂根の百句は、窯変のきらめきの中に、定型の生理そのままに定着する句がシンコペーションのように出現し、面白い対比をなす。感覚の冴えをそのまま投げ出したように見える句は、時代の危機感から遠いように見えながら、時代の変化に敏感に反応する。

  ドル紙幣とて短夜の傷を負ふ

  GIPPO拾ふはんざきの重みとも

「個と全体」は、使い古されたテーマのように見えながら、時代とともに変奏を繰り返し、そのたびに甦る。個の立場からそれを見事に演奏し得るのは、感覚鋭い人の特権であるだろう。時代はいま急激な流れの中にある。

  夭折を果たせぬ我ら燗熱し

夭折を許されぬ人は、次代を歌わねばならぬ。



『超新撰21』・邑書林オンラインショップ

0 comments: