2011-12-25

「週俳の2011年」回顧〔2〕四月~六月

「週俳の2011年」回顧
〔2〕四月~六月
:第206号~第218号 ……上田信治


205号から、なぜか、始まっている澤田和弥さんと上田信治の往復書簡。206号で「拝復 澤田和弥様」と題し、昨年からくすぶっている「フェイク俳句」について、本人としては、一歩踏み込んだことを言っているつもり。また、西原天気「よろしき距離 金子兜太×池田澄子『兜太百句を読む』」は、内容はごく穏当であるのに関わらず、コメントがちょっと荒れました(このあいだの「ふくしま」の時と、様子が似ていて妙)。10句作品は、天野小石さん(句集『花源』)、ひらのこぼさん。

207号は、藤田哲史さん・越智友亮さんによる二人雑誌「傘[karakasa] 」プレゼンツによる特集号(先週、形態を変えてのvol.3、「特集・飯田蛇笏」が出たばかり)。「ひとまず私は、時代に相応しくないやり方を、「俳句の外を掘りすすむ」ことをしてみようと思います。しゃかりきに」(藤田「「俳句想望俳句」における自閉的ニュアンスからの脱却のために」)は、美しい決意表明だと思いました。

話題になった「ヒヤシンスしあわせがどうしても要る」を含む、福田若之さん「はるのあおぞら」10句は、208号掲載(矢野玲奈さん「だらり」も)。前号に続き、「傘 Karakasa vol.2」の話題が、山田露結さん「俳句におけるライト・ヴァース」って何だろう。」、「誤植通知……「傘」編集部/上田信治」、生駒大祐「花見の帰り道で考えていた、人に言葉を伝えるということについて。」と3本。この週、「俳句zine「hi→」vol.3刊行のお知らせ」という告知もあって、「あえて紙」という流れが続いているとも見えます(今年は、10月に紙版「スピカ vol.1」も出たし、「週刊俳句」名義の単行本が3冊)。

209号には、関根誠子羽田野 令さんの10句。今井聖さんの「奇人怪人俳人」第2回・野宮猛夫さんの作品に驚かされました。五十嵐秀彦さんの時評は、話題の評論『川柳×薔薇』(樋口由紀子『川柳×薔薇』)中の、いくつかの論点について取り上げ、特に口語句について「この指摘は、まさに私たちに投げられたボールだ」と。また、なぜか連続掲載となった「さわだかずやの世界」最終回は「交差点―石原ユキオ『俳句ホステス』評」でした。

210号、関悦史さんの時評「被災と俳句」は、貴重なドキュメント(陳腐な言い方だけど、そうとしか言えない)。10句作品は、今村 豊さん。小野裕三さんから207号の記事への応答「藤田哲史さんからの投げかけに応えて」。

211号の10句作品、白井健介さん「フクシマ忌」。タイトルとなった言葉の忌日化が受け入れ難いという声も。たしかに、「フクシマ」と片仮名で書けば原発のことが思われ、直接の人死には出ていないし、福島県は死んでない。でも、そこには、あの事故は何かを殺したよね、という告発のニュアンスもあるような気が。上田「心からお見舞い 『俳句』2011年4月号・5月号を読む」は「俳句」の震災詠大特集に、半畳を入れたってやつですね。

212号は、花尻万博さんの10句、鈴木牛後さんの「見慣れた俳句の風景を壊していくこと 御中虫句集「おまへの倫理崩すためなら何度でも車椅子奪ふぜ」を読む」。

213号、五十嵐秀彦さんの時評「それは本当にあなたの言葉なんですか」は、俳句誌における震災詠などに対する違和感を報告。「電子書籍 週俳eブックス」、中島憲武 掌編小説集『日曜のサンデー』と、西原天気 人名俳句集『チャーリーさん』が、発売。

214号、関悦史さんの時評は、「群像」6月号掲載の群像新人文学賞評論部門受賞作・彌榮浩樹さん「1%の俳句」について。そもそもの論の立脚点が個人的信憑を越えていないのではないか、という疑義。週刊俳句編『虚子に学ぶ俳句365日』発売のお知らせも。

215号、生駒大祐による「しらたま」10句。神野紗希さん「昭和二十年ジャムおじさんの夏 「船団」第89号特集「マンガと俳句」」、松尾清隆さん「赤と青 アンソロジー『水の星』発刊によせて」、生駒大祐「『里』5月号(2011年5月)を読む」と「読む」企画が充実。

216号は、俳句作品もなく、あっさりですが、多めに集まった「週俳5月の俳句を読む」が、それぞれ非常に読み応えあります。

217号は、いろいろ充実号。村上鞆彦さん「海を見に」10句に始まり、青木亮人さん「彌榮浩樹「1%の俳句―一挙性・露呈性・写生」再読 有季定型と「写生」は結婚しうるか(1)」は、彌榮論文の可能性の掘り起こしから、青木さん独自の「辞」の働きについての見解、写生観を提示(タグ-青木亮人から、続けて読めます)。五十嵐秀彦さん時評「「吉野の花見」 角川春樹『白鳥忌』に思うこと」は、山本健吉、森澄雄、中上健次らの登場するサーガの趣。主人公の存在感がイマイチであるのは、たぶん後見人たちがすごすぎる所為で。さらに「『虚子に学ぶ俳句365日』執筆者座談会
高浜虚子な日々」(相子智恵 生駒大祐 上田信治 神野紗希 関悦史)。後記はひさしぶりにHAIKU-mp3をやってます。

218号は、野口裕さんの2本以外は、内部原稿という珍しい号。西原天気による特集「その他もろもろ毛呂篤」異才の俳人をピックアップ。ヨソで稼いで、句集の造本に凝りに凝ったというこの俳人の句集を、写真で見られる「この目でおがむ 毛呂篤の本いろいろ」が楽しい。

これらの号のどこかで、週刊俳句は4周年を迎えているのですが、スタッフ一同、誰もそのことに気づかなかったのでした。

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