2012-01-01

【俳句2012】〈広げる〉流れ 藤田哲史

【俳句2012】
〈広げる〉流れ

藤田哲史


2012年の俳句の世界を考える前に、まずは2011年の回顧から。

この1年の俳句の目立った動きのまず1つめは、『俳コレ』の刊行です。新世代の俳人達の登場を印象づけるアンソロジー(厳密には若手俳人を含むアンソロジー)の第3弾が、2009年の『新撰21』、2010年の『超新撰21』に続き刊行されました。

2つめは、俳句に興味はあるけれど普段俳句を作ることはしない人の目にも触れる機会がつくられたこと。「ユリイカ」誌10月号で「現代俳句の新しい波」と題して特集が組まれたことがもっともそれに当てはまるトピックです。この号では、『新撰21』に入集した俳人のほかコメディアンの又吉直樹さん(ピース)、ミュージシャンの山口一郎さん(サカナクション)の作品が掲載されたことからもわかるように俳句の外を意識した誌面作りがなされました。また「ユリイカ」の他に女性誌「SPUR」で「モードなわたくしがここで一句」が組まれましたし、雑誌以外の動きとして、千野帽子さん主催の句会ライブ「東京マッハ」が6月にスタートしました。

3つめは「ユニット」活動が2011年により活発になったこと。具体的にその「ユニット」の名前を挙げていくと、「guca(短詩系ユニット)」「spica」「手紙」「彼方からの手紙」「hi→」、と多くのユニットが活動しました。「ユニット」ではないですが、俳句結社とは異なる活動として考えれば、私が編集している「傘[karakasa]」もその1つに含められるでしょうか。ウェブマガジン、紙雑誌、zine…。きちんと印刷会社に委託したものからネットプリントを使ったものもあってほんとうに多種多様です。「hi→」に関しては毎号アートワークを取り入れて、視覚に訴える誌面作りをしています。さらに、2011年9月にはUstreamによる音声映像配信企画「Haiku Drive」が登場。生駒大祐と藤田哲史(再び私)がパーソナリティのラジオ番組としてスタートし、12月には『俳コレ』刊行イベント、『俳コレ』竟宴が生中継されました。

最後は三詩型交流企画「詩歌梁山泊」のサイト「詩客」の立ち上げです。短歌俳句現代詩の3ジャンルの詩人達による作品、時評、その他の企画が定期的に更新されています。

このように2011年を回顧していくと、どうやら現在の潮流は、新しい俳人を紹介したり、俳句にそれほど深く関わっていない人へ間口を広げたり、俳句の新しいあり方を提示したり、他ジャンルと交流を試みたりと、俳句を〈広げる〉流れであるようです。

この流れを考えると、おそらく2012年も「俳句を〈広げる〉流れが続いていく」ことが予想されます。

たとえば、「spica」は2012年1月の現時点では、まだ紙の雑誌を「とりあえず、1冊」出している段階。多くの運営メンバーを抱える「spica」が2冊目を出さずに終えるとも思えません。また「ユニットブーム」の火付け役である「guca」は(もともと期間限定での活動を宣言)ひとまず2012年8月に解散となるわけですが、そのメンバーの新たな活動内容も大いに期待されるところ。今年9月以降、全く革新的な活動がもたらされるかもしれません。もちろん、傘[karakasa]の4号の刊行も予定されています。

また、「詩歌梁山泊」は現在のところ3ジャンルの記事がそれぞれ独立にインターネット配信されていることに留まっていますが、きっと2012年にはマニフェストにあるように3ジャンルを「融合」させる新たなイベントが加えられることとも思います。

ただし、俳句のアンソロジーの刊行が2012年もあるか、といえば、今のところその可能性は少なそうです。実は、2011年に刊行された俳句アンソロジー『俳コレ』は、版元は同じ邑書林ながら、『新撰21』『超新撰21』とは編者が異なるのです。一見、立て続けに見えるアンソロジーの刊行ですが、今後の展開が読めないのが「アンソロジーブーム」。『超俳コレ』が出るのか、はたまた、更に編者が移って、(もしかしたら千野帽子さんが編者になって?)まだ見ぬタイトルのアンソロジーが刊行されるかは、予想しかねるところ。

もちろん、この俳句を〈広げる〉流れは、きっとどこかで折り返し地点に到達して、俳句を〈深める〉流れに変わるときが来ることは間違いないはずですが、それはたぶん、もうちょっと先のことのように思われます。この記事で挙げた動き、試みはほぼすべて2010年以降に始まったもの。ようやくスタートを切ったばかりのそれらの試みが、何か大きな実を結ぶのは、まだまだ先のことになるのではないでしょうか。

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