十七枚の一筆箋 金子 彩
鶴に化りたい化りたいこのしらしら暁の
なぜ紫の鬘なのか幸彦忌
覗かせてもらえなくても納屋は罌粟
山羊の匂いの白い毛糸のような性
片腕の駆者をあらそい日と月よ
いなびかり乞食(かたい)とねむる妃にて
膝抱いて胎児出没銀河系
満月のカリンに向きて五分と五分
禁書購いたるカマキリを軟禁す
精靈の家からきのこたちわあわあと
筥いっぱいの櫛焼く父よ秋ま昼
心電図直線木犀の香がそこらじゅう
臈たけていたり次の間の草雲雀
ちちと流れははと淀みて紅葉鮒
猿のように抱かれ干しいちじくを欲る
冬が来るとイヌキが云えり枕元
あれは鶏頭の跫音時間切れ告げに
「らん no.56」より転載
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2012-02-05
金原まさ子 十七枚の一筆箋テキスト
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