2012-03-04

テキスト版 クンツァイト新人6人集

クンツァイト新人6人集


  光彩  中谷みのり

麦蒔の吾を夕日の中に描け
落葉掃皆既月食前の月
冬の星子どもが米を研ぎて待つ
青木の実チューブの絵の具より堅く
春の雪生き物の毛の色を得て




 指の光  神山朝衣

盆の月映してゐたる夜のプール
草市や言葉つたなき子とふたり
秋の夜の子の歯を磨く手が替はり
葉牡丹の家に家族の増えにけり
をさな子にいのちを語る二月かな




 未然  導月亜希

なにゆゑに江戸の本もて懐炉かな
寒明の夜は華やか靴選む
星のとれし木の傍らのチューリップ
早春の笹をさはさはさせたる手
なつかしき人もそろひて花うすし




 日月  岬 光世

烏瓜まひるの中に夜を籠めて
甘き実の満ちたる熊の眠りかな
夜の帳つらぬき止まず雪解川
草餅にならぬ蓬を束にして
花馬酔木磨れば古墨のなめらかに




 エンゲージリング  みわ・さかい

錠前の銘ブルドッグふきのたう
早春や耳に手を当てをんなのこ
箸置きの木にも年輪春炬燵
残業の夫よその手にひなあられ
浅草へベーコン買ひに春の風




 変身 岸由美子

手袋手袋帽子より手袋
北にゆく理由は一つ雪に逢ふ
ストックのリングの先の青き雪
芋の芽や同級生の妻がゐて
缶からにいつものめんこ野蒜踏む


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