ターン 西丘伊吹 (藍子 選)
対岸の向かうも街や夕凪げる
白桃を剥くやじわりと指の冷え
東京をめくれば土や月今宵
伊勢丹の空ほそながく鳥渡る
寒桜曲がり角なき道なりし
何もなきところにかかる冬の虹
雛人形ちひさき闇を纏ひけり
雛壇の一等うへに届かざる
まださくら咲かぬ小枝と初風と
小魚が揃ってターンして早春
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こどものように 衣衣(伊吹 選)
神様と型ぬきをする宵祭
四万六千日女装の人も祈るなり
秋時雨手と足の爪赤く塗る
鶏頭をこどものように抱いてゆく
人工のひかりのまちや都鳥
除夜の湯や幼子のやわらかき瞳
澄んだ名で呼んでください冬の虹
将棋さす爪鮮やかに寒椿
桜東風レジャーシートが空の色
永日やカレーライスと恋心
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イプシロン 楢(衣衣 選)
花冷えや弁当囲んで引っ越しの話
友だちの友だちとのむ夏氷
夕凪はおふろに入ったところです
秋天や青信号に気づかなく
林檎酒ふふみて耳がよく通る
水鳥のくちばし折ったお菓子です
いつまでも昨日でよいと足あぶる
かなしみは感光されて冬の虹
その響き「イプシロン」なり春の風邪
初星や遠く近くに祈りあり
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地図をなくした 日比藍子(楢 選)
月明かりタクシーの背に鳥の夢
ヒール脱ぎ階段降りて梨かじる
無花果の粒噛みながら皿洗う
チョコチップ買って眺める渡り鳥
寒鴉一声啼きて夜来たる
冬紅葉落ちた後ろを振り返らず
糸くずをつまんで聞ける除夜の鐘
雛壇の裏に隠れて飲むお酒
永日や母の香りを懐かしむ
春の雨地図をなくした女の子
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イエスタデー
うららかや外国人(とつくにびと)に道教ふ 楢
かげろふを手玉に取つてゐるところ 楢
亀鳴くや二人がかりで思い出す 楢
三つ編みがほどけてしまう余寒かな 楢
効用に春寒とあるハーブティー 伊吹
証明写真機足飛び出してうららかに 伊吹
あの店に寄れる気がする日永かな 藍子
牛タンを舌で転がす猫の恋 衣衣
うつむいた聖母の角度春の雪 衣衣
花冷えやトリビュート版イエスタデー 衣衣
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2012-04-22
02■hi→作品集(2010.10~2012.3)テキスト
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