2012-04-22

HI→051 いつものように 佐藤文香

いつものように

佐藤文香


服がないんです。お気に入りの服に限ってボタンとれかけで。ボタンつけ直さないと、とは着ようとするたび思うんだけど、でも着ます(なぜなら、洗濯物がたまってて、もうほんと)(いいのあったら試着したまま買って平然と歩く)。いつものように。

井の頭公園。に来たのは、いやーサンロードのお店もユニクロも古着屋も見たんだけど、もひとつグッと来ないからで。あ、公園への階段降りるとき、かなりのイケメンとすれちがいました。カノジョ迎えに駅側に戻ってんだなーってあきらかなかんじの電話しながら長い脚で早歩きしてらっしゃった。アタシも迎えにきてほしーなー(はーと)とか一瞬思ったが、駅からココまでを迷うような女子力がないわ、すでに。

 鴨の群れ黒い歩道にボタン落つ 藍子

いますよね鴨ら。いすぎですよね鯉たち。そうさっきボタン結局落としました、拾いましたとも。つけ直すのはいつかわからんけれども。ポケット入れとくとまたなくしたりするんだけども。

で。今日のメインイベント、飲みにきたんでしたよ。いつもの女子4人、だと、カルアミルクなんて頼んだりしませんし、まあわたくしどもといったら、男子がいても全然「八海山!おちょこ3つ!」「芋、お湯割りで!」な人種ですから、あ。エイヒレきた。マヨ少なくね?

 熱燗やどこかで星が流れている 楢

お店出て、必要以上にふらふらるんるんとアスファルトを歩きだしてるわれわれが、電柱から電線見てみんなで月見て星も見えてきて。流れてないけどさ。駅で、またねーって。井の頭線はわたしだけなんです。バイバイ友よ、わたしだけ、いつものように。

 液晶の画面とろりと暖房車 伊吹

彼からのメールは来ておらず。彼と言っても彼氏ではなく。あつすぎだなこの車両。どうせわたし立ったまま寝るんだろう。帰ったらまず洗濯機回してメイク落とし、コンタクトとって歯磨きして、そういや皿も洗ってなかった、行くとき着ようとしてやめた服たちが床を占領してるんだった、あー服、買えなかったんだった。いーや、明日もあるし。あーもー、明日なくてもいーけどね。

 次の星へ渡る仕度の暖房車 衣衣

「本日もー京王線をご利用くださいましてーまことにありがとうございます、この電車はー銀河鉄道線直通、渋谷方面行きの急行電車です、途中永福町でー普通電車にお乗り換えができますー」(なんて。いや、ここで銀河鉄道線は、センスねーな。)

明日は新宿のルミネあたりで見るか、服。いつものように。

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