2012-04-22

Hi→053変奏するイメージ 異儀田誠

変奏するイメージ

異儀田誠                         


強要ではなく、共有でもなく、「変奏」、何といっても「hi→」の特長は「→」にある。通常、句が詠まれた時点で一つのミクロコスモスが完成し、イメージはその中にとどまったままだが、他者の手に触れることで一気に解き放たれる。句会や連句で味わう感覚はまさしくそういうものだろう。主体から離れた瞬間に溢れ出すイメージを掴みとり、句の潜在的なイメージを呼び起こす、さらに形を変えて、軽やかに弾ませることで垣根をゆるやかにこえていく。それが「hi→」の変奏(ヴァリエーション)である。

いくつか例をあげてみよう。「hi→」2011 spring vol.3で詠まれた

 白酒を回し飲む宵伸びちぢみ 衣衣

から楢氏は、句全体のもの憂い気分はそのままに、言葉のイメージを大きく膨らませて、夕暮れの公園で微熱を感じながら新しい恋人のかつての相手と甘酒を回し飲む、という繊細で覚束ない女心を描いた。

また「hi→」2012 winter vol.6では、

 約束はことばと思ふ冬晴れて 伊吹

 暖房をつけて家に帰ってきた 藍子

詩情に富んだ清々しい余韻の句と、日常的でしっかりとした足取りの句、この趣の異なる二つの句から湧きあがるイメージを融け合わし、衣衣氏がせつなくも温もりのある男女の間柄を変奏している。

このように「hi→」では、単に俳句を鑑賞するだけでなく、そこから溢れだす瑞々しい感性に触れることができる。はじめ抱いた印象へより深く引き込まれることもあれば、全く虚をつかれて驚きを隠せないこともある。立ち止まることなく、彼女たちが変化を求めて澱みなく流れていく姿に、ふと、芭蕉の言った「不易流行」を思い出す…。それはさておき、「hi→」を読んでいると自分の凝り固まった感性までもが一緒にときほぐされていくような感覚を味わえるのは愉しい。

「hi→」2010 winter vol.2において、冬の季語をレシピにするという興味深い変奏があったが、彼女たちがこうした柔軟で弾力のある発想を持ち続けている限り、「俳句から」の可能性はどんどん広がっていくだろう。もちろん誌面だけにとどまらず、書道や製本とのコラボレーションによる変奏も見逃してはならない。


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